たくみふじ
1982年、児童指導員として歩みを始めた著者は、以来四十年以上にわたり、児童養護施設や障がい者支援施設の現場で、子どもたちや利用者一人ひとりと真摯に向き合ってきた。虐待、貧困、障害、家庭の崩壊など、さまざまな苦境の中に生きる人々の声を受け止めながら、彼らの中に宿る「生き抜く力」や「やさしさ」に目を向け続けてきた経験が、著者の創作の根幹を形づくっている。
著者の作品には、過酷な現実を背景にしながらも、必ず“人のぬくもり”と“希望の光”が描かれる。そこには、人間の弱さを否定せず、むしろそこから立ち上がる尊さを見つめるまなざしがある。日常のささやかな出来事――一杯のコーヒーの香り、子どもの笑顔、愛する人との何気ない会話――を丁寧にすくい取り、「本当に守るべきものは何か」を静かに問いかける作風は、時代や世代を超えて多くの読者の共感を呼んでいる。
また近年は、AI(人工知能)を創作のアシスタントとして活用しながら、執筆の新たな可能性を探求している。AIに与えるプロンプト(指示文)の工夫によって作品の完成度が変化する現象を、単なる技術ではなく“共創”の一形態として楽しみ、同時にAIの限界――文体の統一、感情の深み、キャラクターの一貫性――を補うため、校正や加筆修正を怠らない姿勢を貫いている。
著者は、AIが生み出した文章であっても、最終的な責任と表現の魂は人間に宿ると考える。そのうえで、出版倫理と透明性を重視し、「AIを利用して執筆した」旨を明示することの大切さにも言及している。AIと人間の協働が進む時代においても、創作の本質は変わらない――“人の心を描くこと”こそが文学の原点であるという信念を胸に、著者は今もなお筆をとり続けている。
長年にわたり現場で見つめてきた「生きることの現実」と、AIとの対話を通して見えてくる「表現の未来」。その両方を見据えながら紡がれる著者の作品は、読者に寄り添い、静かに心を揺さぶる物語を届け続けている。
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