児童養護施設で働くあなたへ
児童養護施設で働くあなたへ、私たちは、業務や子どもたちへの関わりの中で、ついつい、「言い訳」を探してしまいます。「あの子が言うことを聞いてくれない。」「注意欠陥多動性障害だから仕方ない」「時間が足りなかった」「あの職員が協力してくれない」等々、上手くいかない事実に対して、言い訳を繕い自分自身を納得させてしまいます。しかし、私たちは、プロなのです。すべての言動にプロとしての自身と責任を持つ必要があります。例えば、外科医師が、使用したメスが悪かったために手術を失敗しました。良いメスを使用していたら、このような事態にはなりませんでした。と言い訳をした場合、それが、通用するでしょうか。私たちの仕事は、子どもたちの心に入っていきます。外科医師のメス以上に深い部分に切り込んでいくことになります。言い訳など許されるはずがありません。本物のプロは、言い訳などしません。「弘法も筆の誤り」と言う言葉がありますが、これは、弘法ほどの達人でも間違いや失敗があるとの意ですが、弘法は、その間違いに気づき、筆を投げて、足りなかった点を付けたという話へと繋がります。 私たちは、幾らプロと言えども、力足らずの人間であることに変わりはありません。失敗や間違いは、日常茶飯事です。大切なことは、失敗したり、間違ったりしても、速やかに修正を施す柔軟性なのです。そこに、言い訳は、必要ありません。重要なのは、振り返り(反省)と修正の検討です。私は、職員育成を担っていた頃、職員に「失敗しなさい。責任は、私が持つ。」と話していました。失敗しないと職員としての成長は鈍化してしまいます。成功の連続の場合、人は、有頂天になって自己を見失ってしまいます。ですから、何事にも恐れることなくチャレンジしてください。主任クラス以上の皆さんは、職員たちを励ましてください。施設長は、すべての責任を担ってください。それが、組織です。組織の活性化とは、職員の失敗の数に比例していくことでしょう。 児童養護施設の主役は、子どもたちです。そして、職員は、その主役を支える名脇役です。映画やドラマは、主役だけが輝いていても、すぐに見飽きてしまいます。そこに、名脇役がいるからこそ、映画やドラマに、人々は、引きつけられていきます。 また、児童養護施設は、土であり職員は、こやしです。そこに子どもたちは、根を張り、芽を出し、木となり枝を張り、葉を広げ花を咲かせ、実を実らせます。 児童養護施設で働くあなたへ、子どもたちの名脇役であり、子どもたちを育むこやしのような存在になってください。 そして、子どもたちに決して見返りを求めないでください。あなたがどんなに一生懸命、誠実に関わっても、あなたがどんなに愛しても、子どもたちの中には、感謝やお礼の表現をしない子どもたちもいます。また、今ではなく、後々に結果が表出される場合もあります。つまり、子どもたちとの関わりの中では、結果は見えにくいものです。そのような状況で、見返りを求めていると、あなた自身が萎えていきます。見返りを求めない無償の愛、キリスト教的には「アガペ」と表現されますが、アガペの領域に踏み込むことができたら、どんなに素敵なことでしょう。