職員の想い…中学3年生の君へ(数字は数年前のデータを使用しています。)PDF
1 法律で定められた職種
最低基準
(職員)
第四十二条 児童養護施設には、児童指導員、嘱託医、保育士、栄養士及び調理員を置かなければならない。ただし、児童四十人以下を入所させる施設にあっては栄養士を、調理業務の全部を委託する施設にあっては調理員を置かないことができる。
2 職業指導を行う場合には、職業指導員を置かなければならない。
3 児童指導員及び保育士の総数は、通じて、満三歳に満たない幼児おおむね二人につき一人以上、満三歳以上の幼児おおむね四人につき一人以上、少年おおむね六人につき一人以上とする。
条文通りに、児童養護施設では、幾つかの職種や立場が相互に連携し合いながら、日々の業務が進んでいきます。そこで、それぞれの役割の業務内容例を挙げていきます。
2 保育士(小舎制の場合)
家庭的(母性的)養護を実現できるのが小舎制(ユニット制)の長所であり、保育士は母親の代替的役割を担っています。しかし、母親との役割の差異は明らかです。
①母親は、例えば、17歳の子どもの子育てをするに当たり、17年間の母親修行期間があります。つまり、子どもの成長と共に母親も成長していくのです。しかし、児童養護施設の保育士は、短期間で、1歳から18歳(退所後アフターケアを含む)までの子育て技術を習得する必要があります。それが「専門性」です。
②現在の一般家庭での子育ては、1~2名程度ですが、小舎制では6名~12名の子育てを常に担います。居住スペースの掃除、洗濯、食事作り等の業務があります。
③児童養護施設には、様々なタイプの子どもたちが入所してきます。それぞれの個性に応じて、ケース・バイ・ケースで専門性を持って対応します。「ウォームハート・クールヘッド」人間性の修養も求められます。
④社会福祉施設として、保健衛生管理を確実に行います。居住スペース、子どもの身体等、常に気を配らなければいけない項目はたくさんあります。
⑤専門家として、各種記録を記載・作成します。時には事例発表等の機会も訪れます。また、研修会等の参加も求められます。
⑥各種行事の企画・実施、環境整備、関係機関との連携、地域との連携、学校との協調等、子育てに関わる間接的な関係構築を行います。
ここまで、列記しただけでも、母親との役割負担の差異は明らかです。ただし、母親は24時間ですが小舎制の保育士は8時間勤務となります。
3 保育士と児童指導員
保育士と児童指導員は明らかに役割が違います。子どもたちの養育で最も重要なことは「母性的養護」です。子どもが誕生したとき最初に基本的信頼関係を築くのは母親です。その後、乳児期から幼児期にかけての発達段階でも子どもの最大のパートナーは母親なのです。児童養護施設に入所してくる子どもたちの大半は、その母親の愛情が不足しているパターンが多く見られ、児童養護施設の保育士は、その部分を補填する役割を担うことになります。
児童指導員は父性的な役割を担うことになります。母親が生き方を教えるなら父親は人生を教えることでしょう。
職員たちに必要な事は、「大人になる」と言うことです。まず、職員自身が大人になることが重要なのです。児童養護施設に入所してくる子供たちは大人への不信感で一杯です。大人が信頼できる存在であれば、入所することはなかったことでしょう。つまり、子どもたちにとって必要な存在は、信頼できる大人なのです。
保育士と児童指導員の給与格差
児童福祉施設の給与支給は、人事院勧告による行政職棒給表又は福祉職俸給表を参考に支払われるパターンが多いと思います。と言うのは、社会福祉法人や社会福祉事業団、公立の施設等、経営主体によって、少し異なるからです。
さて、保育士と児童指導員の給与格差ですが、これは、ほとんど考えられません。上述した棒給表は、同じ表を使用するからです。格差が生じるのは、学歴や経験年数によってとなります。
保育士にとって大切な事
根本は「愛」ですが、それは、余りに抽象的すぎるので、もう少し、具体的に表現すると、子どもたちに「生きるための常識」を伝えることです。子どもたちは、いつかは、社会に旅立っていきます。一人で生きていける力を与えることが保育士にとっての大切な役割です。
では、「常識」とは、何でしょう。各々の感性で変化する捉え所のない言葉であります。だから、とても大切です。子どもたちが職員によって誤った常識を与えられると、それが、その後の人生に大きく影響します。
「玄関で靴を片づけましょう」「部屋を整理整頓しましょう」「朝から洗顔しましょう」「肘をついて食事しないようにしましょう」等々、日常生活の当たり前の常識は、至る所に転がっています。それらを習得していない子どもたちに習得するための手助けをしていくことが大切です。
「子どもの部屋が乱雑だ」→「何度注意しても○○ちゃんが片づけていない」で終結しないで、その後に「自分の支援不足だ。次は、このように対応しよう」と展開していくことが重要です。
保育士業務の在り方は、子どもたちの人生を左右するほどの影響力があると言っても過言ではないでしょう。だからこそ、プロ意識が必要です。
4 支援の流れ
最低基準
(生活指導及び家庭環境の調整)
第四十四条児童養護施設における生活指導は、児童の自主性を尊重し、基本的生活習慣を確立するとともに豊かな人間性及び社会性を養い、児童の自立を支援することを目的として行わなければならない。
2 児童養護施設の長は、前項の目的を達成するため、児童の家庭の状況に応じ、その家庭環境の調整を行わなければならない。
(自立支援計画の策定)
第四十五条の二 児童養護施設の長は、第四十四条第一項及び前条第一項の目的を達成するため、入所中の個々の児童について、児童やその家庭の状況等を勘案して、その自立を支援するための計画を策定しなければならない。
子どもたちが社会に旅立ち、豊かな人生を送れるよう準備していくことこそが自立支援です。子どもたちへの支援を進めても結果は、子どもたちが大人にならないと分からないと言う現場のジレンマはあるものの、ライフサイクルの中の今、子どもたちに何を提供するのか、その目的意識とプロセスが重要であることは周知の事実です。支援の流れは、各児童養護施設の方針で異なりますので、モデルケースを紹介します。
1.支援の流れ
①ケーススタディ(入所後1週間以内)
子どもの入所前の状況を児相からの添付書類を中心にスタッフで学習し、当面の目標設定を行います。
②ケースワーカー面接(入所後1週間以内)
ケースワーカーが子どもと面接し、ケースワーク的側面からのインタビューを試み、目標設定を検討します。
③チームミーティング(随時)
子どもと直接関わるスタッフが、日常生活の中での発見を共有したり、課題点を確認しあったりしながら、支援目標に向けての支援を進めていきます。
④心理療法(随時)
心理担当者が心理療法を実施し、子どもの内面を探ったり、情緒的安定を図ったりを試みます。
⑤ケースミーティング(6か月前後)
支援状況を確認し、生活面・心理面での目標達成度について情報共有を行い、支援目標の再設定を試みます。
⑥評価会議
支援目標が終結に近づいてきたところで、家庭復帰か社会的自立か、措置継続かの最終目標に向けての具体的検討を行います。
2.情報収集
①児童の意向を、ケースワーカー面接等を通じ、本人から聞きます。
②保護者の意見、特に保護者が園に対して何を期待しているのか等を確認。
③前籍校担任の意見を聞き、学校での様子等を確認。
④児童相談所担当者の意見、ケースワーク的、心理的な部分で、児相がどのような支援目標を委託したいのかを確認。
⑤保育士のファーストコンタクトの印象を含めた意見を記録。
⑥児童指導員のファーストコンタクトの印象を含めた意見を記録。
⑦心理療法士のファーストコンタクトの印象を含めた意見を記録。
⑧その他、関係機関からの意見を収集できた場合、記録し、支援の参考にします。
3.具体的支援目標及び方法の設定
次の項目を中心に各担当者が設定します。
保育士…基本的生活習慣・経済観念・社会性
児童指導員…学習・道徳
心理療法士…自己確立・個性の伸長
保育士…健康管理
ケースワーカー…家庭環境調整
その他
*達成可能な目標設定を試みるよう配慮します。
4.児童養護施設としての支援プログラム
①社会経験の積み重ね
生活場面に於ける、買物や外食等のお出かけ、催物への参加等
社会福祉施設や企業への実習やボランティア経験又はアルバイト経験等
②対人関係の改善
夏季キャンプ等、グループワーク技法・心理療法等
③経済観念の育成
お小遣いを支給し、その管理方法を支援(買物計画や貯蓄の経験)等
④関係機関の手続き実技体験
退所時の住民移動手続き・自力通院への支援等
5.自立支援に於ける主な職員支援基準
①年齢、能力に応じた支援目標を策定する。
②ノーマライゼーションの理念を念頭に置く。
③日常支援の中で、QOL(生活の質)向上に寄与する。
④虐待したり、児童を研究材料として扱ったり等があった場合は、懲戒権を発動する。
⑤職員自身がモラルに反した言動を行わないようにする。
児童養護施設で働くあなたへ、子どもたちは、家庭やその地域社会で育っていくのが理想です。しかし、現実に子どもたちは、児童養護施設へ措置されています。私たちの役割は、いかにノーマルな状態へと子どもたちを導いていくかに掛かっています。そのためにスタッフ全員がチームワークを駆使し、自立支援に向けて関わっていくことになります。表現を変えれば、あなたが子どもたちの人生に関わっていく第一歩となります。あなたも、そして子どもたちも人生は、一度だけです。より良い人生を構築していくための努力を惜しまないようにしましょう。
5 生きるノウハウ
子どもたちが退園するとき、どのような準備が必要なのかをまとめました。
1.退園準備
退園は子どもの園における生活の終わりです。従って幾つかの整理する項目があります。
①自分の持ち物を整理する(持っていく物・処分する物・他の子どもに譲る物を整理する)。
②寝具の洗濯をし、不要な物は整理し部屋、ベッド、机は次の入所児のために備えます。
③お別れ会をし、集会の場を利用し挨拶させます。(人生の分岐点であることを明確にします。)
④就職の場合は必要な物を買い整えます(就職支度金の利用)。
2.退園時に確認すること
①保護者の連絡先(住所と電話番号)
②就職の場合は職場の連絡先と社員寮の場合はその連絡方法
3.退園時の書類と手続き
①必要書類の提出(送付)…「入所(委託)措置の解除について」
②住民票の準備…就職の場合は社会的自立の一つとして本人が役場に行き取り寄せます。
③措置解除…「児童措置解除通知書」が児童相談所より送付されます。
4.家庭復帰への準備
家庭復帰は、子どもの入所同様に、児童相談所を通して保護者の家庭の状況調査が行われ成立し、次の段階を追います。
①保護者の生活状況を調査(家庭訪問を含む)し、児童相談所(担当福祉司)との連絡をとります。
②親子関係の回復をはかるため、家庭復帰を想定して面会や、一時帰省を繰り返し本人と保護者との関係を密にしていきます。
③現在の子どもの状況など(園での生活、学校での生活)を説明し、家庭復帰後の生活の上での目標や留意点等について、担当職員、子ども、保護者で話し合います。
これらの流れを通して最終的に家庭復帰となります。
5.就職準備
就職。自立の課程での課題点
①人間関係
卒園生の就労状況を見ていると会社での人間関係のもつれで辞めてしまう者が多い。児童養護施設にいたため世間知らずで、近所の人々とのつきあいも、どのようにしたらよいか分からない。急に一人になってしまうことへの不安もあることでしょう。
②経済的問題
買物をした経験が少ないので品物の値段が分からない。これまで児童養護施設で金銭の管理をされているので、社会生活の中で生活の自己管理ができるかどうか。
③社会常識
住民票の提出、預貯金、病院へのかかりかたなど社会生活に関わる諸手続の具体的な方法が分からない。
④食生活
料理を作る機会が少なかったので自炊できるか、また栄養のバランスが分からないので健康管理が心配。
以上のことが挙げられますが、これらのことは社会生活を通して、児童養護施設に与えられた処遇上の課題であり、処遇現場はこの課題を素直に受け止め日常の処遇から、アフターケアへと繋げていくことが必要になります。
6.最低限考慮しなければいけない事柄
①転出手続き…高校卒業の場合は、子ども自身にさせます。(職員の援助は子どもに応じて臨機応変に)
②新生活準備買物…まずは、何が必要なのか子どもと共に予算計画を立ててから買物に行きます。(スーツ一式・寝具・電化製品等々)
③物価を知る…買物に付きあってもらったり、おつかいを頼んだりします。
④交通機関の利用方法…意外と分かっているようで分かっていない事柄です。
⑤一人生活体験学習…1週間前後、一人生活を体験してみる。生活費を渡し、その予算内で食事を賄い、規律正しい生活をする。毎日、報告書を提出し、担当職員とのミーティングを行い、その日の生活を振り返り、翌日の生活に生かしていく繰り返しを体験。(一人生活の寂しさを事前に味わう)
⑥一般常識の学習…水道光熱費のこと、自動車を維持するために必要な経費や手続き、結婚式や葬儀参列の常識、戸籍謄本や住民票に関わる官公庁、印鑑証明の手続き、警察へのヘルプの求め方、消費者相談窓口の存在、TPOに合わせた服のコーディネート等
*これらを子どもたちに伝える前に、まず職員自身が事前学習を行いましょう。
⑦他府県への転居…小中学生の場合、言葉へのカルチャーショックは大きな影響があります。時には、いじめに繋がる場合もあるくらいです。できる範囲で、教科書やTV等の標準語と方言との違いを伝えていくことも大切でしょう。つまり、方言を使わないことを教えるのではなく、何が方言なのかを教え、郷土の言葉を大切にする心を育めたらベストです。
児童養護施設で働くあなたへ、社会人になった時、知らなくて恥ずかしい思いをしたこと、困ったこと、辛かったこと、あるいは、知ってて便利だったり、助かったりしたことなどを思い起こして、子どもたちにアドバイスしましょう。特に新任職員は経験が新鮮で適任でしょう。子どもたちが、社会に旅だった後は、あなたの支援が思うように届かなくなってしまいます。今、目の前にいる子どもたちに、社会で生きていくためのノウハウを伝えていってください。
6 記録の書き方
ケースファイルとは、表現の一つです。そして、このファイルは、厳重な取扱いが必要であり、守秘義務の励行は、もちろんのこと、記入する上でも緊張感を持った配慮が求められます。
例えば、ある児童が触法事件を起こしたと仮定すると、警察による取調べの後、家庭裁判所の調査官による調査が行われます。その際、児童や担当者への聴取はもとより、個人記録の提出を施設側に求める場合もあります。その提出書類の内容が裁判官の心証に影響することは、容易に想像できます。従って、記録の中に担当者の主観が入っている場合、それが、裁判に影響し、児童の人生を左右する結果になってしまう。このようなことは絶対に避けなければならないのです。
では、具体的に記録をどのように記入していくべきか。答えは、簡単明解です。客観的事実を記入していけば良いのです。
①年月日を確実に記入する。
②「~と思う。」「~で自信をもっただろう。」「~ではないか。」等の表現は、記録者の主観的な捉え方であって、同じ事柄に対して、記録者によって表現が変わる危険性があります。客観的事実のみに絞り込んで記入することが必要です。
③ただし、心理・発達・知能検査等によって明らかになった事柄については、科学的根拠なので記入します。
④むやみに長い文章は、好ましくありません。記録とは、蓄積されていくものです。自分が記録をみて、支援内容を振り返る事はできますが、自分以外の職員が読むこともあり、更に、担当が変更になった時は、次担当の極めて重要な基礎資料になるのです。長い文章は、読む前にうんざりするパターンの人もいることを忘れてはいけません。従って、5W1Hを基本に起承転結を構成しながら、簡潔にまとめ上げる文章能力が記録者に求められます。
⑤特に用語に気をつける必要があります。用語の使い方によっては、児童の人権を著しく傷つける場合もあり、例え、児童やその保護者の見ない文書であっても、配慮することが求められます。また、そのような用語を使う記録者の意識も人権侵害の方向性を持つことになり、用語の使い方は、意識の持ち方に連動しやすいことを、常に念頭に置いておくべきです。
⑥記録は日記とは明らかに異質の性格を持つべきです。児童個々の目標や行動特性、心理・発達状況に焦点を絞り、何があったのか、どのように対応しているのか、そして、どうなっているのか等の経過を記していくことによって、記録としての効力を発揮することは、言うに及ばない周知の事実です。
⑦特記事項として、医療記録(通院・通所状況等)、心理療法の実施状況、家族の面会や外出、外泊状況、学校との連絡事項等を記入していきます。
⑧児童入所時から1~2週間は、ほぼ毎日経過記録を記入します。この初期の様子がどのように変化していったのかが何年後かに振り返りを行うときに意味を成してくるのです。経過記録は、毎日記入するのが基本ですが、入所時初期段階以外は、2~3日毎に記入する程度で十分でしょう。また、長文は避け、2~4行の短文で記録するのが望ましいのですが、重要なケース内容については、長文になることでしょう。児童が退所する際には、退所理由や退所時の様子等を記載した終結記録が必要です。
⑧固有名詞、特に他の児童名等の実名は控えるべきです。極力、イニシャルやニックネーム等で表示するのが望ましい。序文で述べている通り、第三者が記録を見ることもあり、個人情報保護の観点を視野に入れた対応が必要です。
⑨以上の点を考慮に入れて、誰でも読める字で記入していくことが大切です。折角、素晴らしい記録でも読めなければ意味がないのです。
ケースファイルは、各ケースの記憶の引き出しです。職員も人間なので、忘却してしまうこともあり、担当者が変更されれば、新担当者は記憶を呼び起こすことすら不可能です。だからこそ、記録が必要なのです。
まず、間違いなく綴ってあるのは、経過記録や自立支援計画ですが、通知表(成績表)、優秀者に選ばれた際の賞状のコピー、診断書、眼鏡等購入記録、他機関へ申込書や申請書を提出した場合の書類のコピー、ケース会議やケースカンファレンスの議事録等々、児童の歴史を物語る証明になる文書等を綴っていくことが求められます。 児童の人生にとってトピックスとなる文書は、ケースファイルに綴じておくべきです。その児童の将来の担当者にとっても、貴重な情報源になることは間違いありません。
ケースファイルは、児童が長期に在園している場合、分厚くなるのが通常であり、課題が多い児童と課題が少ない児童で、ケースファイルのボリュームは変わってきます。
児童養護施設で働くあなたへ、専門家は、日々の業務を遂行していけば、それで良いのか。否です。業務の証拠を積み重ねていくことが求められます。それが、記録です。児童福祉で働く、保育士・児童指導員・栄養士・心理療法士・看護師等、すべて、専門家であり、いわゆるプロフェッショナルです。経過記録等を記入する場合は、文章力が必要であり、書類を取捨選択する選別力も必要であり、何より、子どもたちを愛する心が基本なのです。
7 通院引率の注意点
耳鼻科、眼科、歯科、内科、外科等、子どもたちを病院に連れて行く機会は、日々、発生します。通院は、社会と接する良い機会であり、子どもとのコミュニケーションの場としても有効です。そんな通院引率にも、幾つか留意点があります。
(1)子どもを送り出すときの留意点
①通院する日の朝に子どもに知らせて、学校が終わったら早く帰ってくるように話します。
②服装は、学校に着ていく程度のこぎれいな服装を着用させます。また、靴・靴下が綺麗であるかを確認します。
③手足、顔を洗い、歯磨き(歯科)、場合によっては、下着の交換等をさせます
④その他、雨天時又は雨が降りそうな時は、傘を持たせ、日射の強い日は帽子をかぶせ、冷え込みそうな時は、上着を着用させる等の配慮を行います。
⑤上記を留意し保育士が送り出します。
(2)通院引率時の留意点
①子どもを一人にしない、また、一人にさせるようなことも必要最小限抑えます。
②通院中の飲食、物品の購買等は避け、子どもが催促した場合、通院という目的意識を明確にするよう話します。
③万一、子どもが行方不明になった場合、状況を速やかに報告し、対処します。
④病院内等で、他の人に迷惑のかかるような行動を子どもが行った場合、その時の状況に応じて対処します。
(3)子どもへの教育
①自分の疾病に対する認識を持たせます。(通院途中の会話の中で)
②通院すると言うことを認識させ、遊びに行くのではないことをはっきりさせます。
③勝手な行動をしないように話し、必ず、引率者に報告し確認をもらうようにさせます。
④他の人に迷惑のかかるようなことはしないようにさせます。
(4)通院帰宅後の留意点
①薬等は、引率者から直接、保育士に手渡すようにします。その時、医師から聞いた、症状・病名・治療方法等を正確に伝えまた、次回来院日も連絡します。
②極力、メモを渡すことがベスト。保育士は、確実に、経過記録に通院の結果等を記入します。
(5)引率者の留意点
①引率者は慎重に責任ある行動をとります。
②処理できない問題が生じた場合、園に連絡して指示を受け従うようにします。(間違った判断で対処すると大きな事故に繋がる。)
③社会に接する機会として、その影響は大きいので周囲の環境に適応できるように配慮します。
児童養護施設で働くあなたへ、通院は、関係機関(病院)との大きな接点です。例えば、足の皮膚病で皮膚科に通院したとします。子どもの足が、汚く臭い状態であったら、医師や看護士は、どう思うでしょう。きっと、児童養護施設の衛生管理は、こんなものなんだと判断することでしょう。このようなことがないよう、送り出す人も引率者も気をつけていきましょう。
8 家庭支援専門相談員の役割
家庭支援専門相談員は、虐待、放任等の家庭環境上の理由により入所している児童の保護者等に対し、児童相談所との密接な連携のもとに電話や面接等により児童の早期家庭復帰等を可能とするための相談・指導等の支援を行い、入所児童の早期退所が達成されることを目的とした役を担います。
機能と連携内容
・家庭復帰支援を行うための相談室又は相談に応じることができる部屋(プライバシーが確保される場合、他の部屋との共用も可)を設置。
・家庭支援専門相談員は、人格円満で児童福祉に関し相当の知識・経験を有する者又はそれと同程度の知識・経験を有すると認められる者を任命します。
・児童相談所と密接な連携を取り、その指導・助言に基づいて、家庭支援専門相談員をして具体的な家庭復帰支援を行うよう努めます。
・家庭復帰等の対象児童を把握し、家庭復帰等に向けた計画を作成し、それに基づき、家庭支援専門相談員をして家庭復帰支援を行います。
・家庭復帰支援を行った内容について記録するとともに、評価を行います。
家庭支援専門相談員の業務内容
1保護者等への早期家庭復帰のための業務
①保護者等への施設内または保護者宅訪問による養育相談、養育指導等
②保護者等への家庭復帰後における相談・指導
2里親委託促進のための業務
①里親希望家庭の訪問・面談等による調整
②委託後における相談・指導
3地域の子育て家庭に対する育児不安解消のための相談・支援等
4低年齢児ユニット職員への助言・指導及びケース会議への出席
5児童相談所との連絡・調整
6その他業務遂行に必要なこと
家庭支援専門相談員は、最低基準の第四十四条の2で規定されています。しかし、同法第四十二条の3に規定されている職員数と現在の労基法による勤務態勢では、第四十四条の2が現実面で未達成のため、施設機能強化推進費の事業として「養護施設入所児童早期家庭復帰促進事業」を加えました。それは、短期的な事業であり恒久的な職員雇用ではありません。
次は、児童虐待防止法の第五条の3の具体化が求められます。児童養護施設では、第四十二条の3の児童6に対する職員1を児童2に対する職員1へと改正するよう要望してきましたが、施策として、そこには手を付けず、加算事業の名目で予算を割り振ることになりました。
主な加算事業は、
・家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー)の配置
・被虐待児個別対応職員の配置
・被虐待児受入加算
この内、家庭支援専門相談員は、施設入所児童の早期家庭復帰等を図るため、施設入所前から退所まで、更には退所後のアフターケアに至る総合的な家庭調整を担う家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー)を配置する。(乳児院、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設を対象)
となっています。
9 ケースワーカー
ケースワーカーについては、現在では、ソーシャルワーカーと表現する場合もあります。先進的な児童養護施設では、専任のケースワーカーを配置しています。これまでは、ケースワーク的業務も保育士や児童指導員、つまり直接処遇職員全員が関わっていましたが、欠点としてケースワークの一貫性を保つことが難しく、その上、人格障害や虐待を行った保護者等々、対応に関して直接処遇職員の精神的疲労が児童対応以外で蓄積する傾向にあることです。つまり、ケースワーカーは、児童指導員や保育士のケースワーク業務を分離し、その部分をソーシャルワーク的に行う専任の職種と言うことになります。今後、求められていく職種になると信じています。将来的には、社会福祉士の活躍の場になればと期待しています。
ケースワーク担当者の業務
子どもは、本来、家族と共に過ごすものです。しかし、被虐待児や明らかな養育意識怠慢、保護者の所在不明等、難しいケースが存在していることも事実です。ケースによっては、きっかけを与えれば、家庭復帰も考えられる場合もあり、そのきっかけは、保護者へのカウンセリング、児童の行動特性緩和、関係機関との協力態勢等、ケースワーク的技術によるものが多々あります。
児童の個性に対する対応についても、担当者にお任せ状態では、適切な、そして、一貫性を持った対応に疑問をいだかせてしまいます。職員がチームとして各個性に対応していくために、コーディネーター的役割を担うケースワーク担当者の役割を家庭支援専門相談員と個別対応職員で分担します。
ケースワーク担当者の業務内容
・児童相談所との連絡調整。
・入所児童担当者決定…施設長を中心に職制と協議し、担当者に告知確認を行います。
・入所児童措置前調査…保護者との面談、居住地域調査(民生委員・児童委員、保健師との面談)
・一時保護所への面会…担当保育士と共に面会に行く。(児童福祉司が連れてくる場合有)
・各種手続き…住民票の異動や転校手続き、入所措置の手続き等。
・入所受入れ準備…受入れユニットに於ける、生活用品チェック、ケアファイル準備。
・入所受入れ…担当保育士と共に受け入れ、入所時に於ける緊張を極力和らげるよう配慮します。
・各種ケア記録の整備…児童相談所提出書類の記入・提出。
・ケア会議の開催…ケア資料の作成及び担当保育士への資料準備依頼。会議の招集。
・ケース記録を職制に回覧し、確認後、ケアファイルに綴ります。
・必要に応じ、家庭訪問あるいは、保護者との面談を行います。
・面会、外出、外泊の調整、受入れの調整を行います。事務所の面会室にてケースワーク担当者が保護者と面談し、児童は、例えば、外泊の場合、担当保育士と共に外泊準備をして面会室にきます。
*ケースワーク担当者の休日設定には、十分な配慮が必要であり、例え、休日であってもケースワーク上、必要であれば駆けつけるだけの責任感を要する業務であります。
・ケアファイルの整理…児童の全体像が把握できるよう整理し、担当が変更されても処遇の一貫性が保たれるようにします。
・アフターケアの調整…児童の退所後も児童の状況に応じ、企業訪問をしたり、里帰り等の児童への園内宿泊調整を行ったり、各種相談に応じたり等を行います。
・事件処理…入所児童が触法行為等の事件を起こした場合、その処理を行います。
・担当児童の他に全児童と年間最低1回を目標に個別面談を実施します。ここが、ケースワーク担当者としての本領発揮の場面です。
10 心理療法担当職員
被虐待児や情緒的に不安定な児童、反社会的・非社会的行動特性を表現する児童、性格の偏りを示す児童等、発達課題への対応が必要な児童には、心理療法士による心理療法やカウンセリング等を個別に実施します。
1.心理療法室の完備
児童養護施設で心理療法を行う場合、
①心理療法室が現実の日常生活場面と同敷地内にある。
②心理療法士は、複数児童を担当する。
①は、児童にとって生活場面と心理療法場面の切替えや、気持ちの切替えが難しいと言う面が挙げられ、②は、児童にとって心理療法士が自分にとって唯一の相談相手として成立しにくいと言う側面も併せ持っています。
これらの要因を少しでも緩和するために、児童が生活場面である建物から一旦外に出て心理療法室棟の玄関から入り心理療法室に来室すると言う環境的な配慮が求められます。生活場面から心理療法場面への切替えを生活場面の玄関と心理療法場面の玄関で比較的容易に行えるようにします。
また、生活場面から独立した場所に心理療法室があることによって、心理療法場面の玄関を入ったら、心理療法士は、その場面において、自分にとって唯一の相談相手であるとの認識が持ちやすいとの利点が生じることになります。
心理療法室は、複数準備します。これは、同時間帯に複数の児童の心理療法を行うと言う利便性ではなく、雰囲気や機能の異なる部屋を準備しておくことによって、児童の心理療法過程や、その日の心理状況によって部屋を使い分けるためです。
2.心理療法の場面設定
臨床心理において、生活場面と心理療法場面は、物理的にも心理的にも構造上、区分けするとの考え方があり、心理療法士は児童の生活場面に関わらないとの姿勢が一般的です。
しかし、児童養護施設においては、前項である程度の改善は図っているものの、心理療法室が生活場面と同敷地内にあるため、児童が、心理療法場面の他の時間帯に心理療法士と出会ったり、他児童や職員との関わりを見たりと言う場面に遭遇することは、容易に想像できます。
従って、児童養護施設における心理療法の方向性として、心理療法士を生活場面から完全に切り離すのではなく、心理療法士が生活場面に関わりながら児童の愛着の再修復やPTSDへの心理療法を行うことにより、愛着対象が児童にとって分かりやすく、愛着形成を効果的に促しながら被虐待児への心理面でのケアを進めていくことが必要です。
このことを通し、被虐待児を取り巻く生活環境(日常生活状況)の情報を自分の目で確かめることによって、児童理解ができ、心理療法の方針や技法の計画が、児童に合った形で構築できます。また、心理療法による影響が生活場面にどのように表出されているかの確認も容易になります。
3.個別対応職員・家庭支援専門相談員との連携
心理療法士にとって、守秘義務は、厳守しなければなりません。しかし、児童養護施設という特異な環境では、個別対応職員・家庭支援専門相談員との連携の中、生活の中での心理療法を進めるに当たり、児童にとって利益をもたらすような情報共有は必要であり、それが児童の処遇効果にも影響し、心理療法との効果的な相互作用を生み出すと考えられます。特に心理アセスメントを図る場合、情報は多ければ多いほど、多角的に心理療法の目的が構成しやすく、児童との目的の共有に当たっても、児童が理解しやすい心理療法の目的を示すことができると言う利点があります。
また、個別対応職員・家庭支援専門相談員との連携において、職員が児童への理解を深め、児童処遇の方向性が導き出されたり、対応に余裕ができたり等の効果も十分に期待できます。そういう意味で心理療法士は、職員へのメンタルサポート的な側面も併せ持つことになります。
心理療法による効果は、心理療法の場面だけで得られるものではありません。心理療法により表出された児童の内面を理解することによって処遇方針を適切な方向へと導きだし、生活場面へと適用させていく、その過程において初めて心理療法の効果が現実場面で表出します。
従って、児童養護施設で心理療法を導入するに当たっては、個別対応職員・家庭支援専門相談員との連携が必要不可欠な要素であると考えられます。
11 調理室と栄養士
児童養護施設における食事提供の基本は、「温かい食べ物は温かいうちに、冷たい食べ物は冷たいうちに」、子どもたちに味わって貰うになると思います。
従って、子どもたちの生活時間に合わせて、業務を組み立てていくことが大切です。子どもたちが食事をする時間に合わせて、時間を逆算し調理の手順を組み上げていきます。調理済みの料理は、時間の経過と共に味が落ちていき、雑菌混入のリスクが増していき衛生的にも良くありません。
また、アレルギー児童への配慮も必要です。卵、乳製品、小麦粉、大豆、そばなどの食物アレルギーを持った児童が措置されてきた場合、対応を検討し、十分な配慮を行うことが大切です。特に除去食を行う場合は、調理器具から食器に至るまで細心の注意を払うことが求められます。
現代社会における調理業務は、調理内容が複雑になり手間もかかり重労働と言えるでしょう。また、情報は、年々更新され、常に最新の正しい知識を得ていく勤勉さも求められます。
児童養護施設の調理室にとって重要なことは、調理員同士のチームワークは勿論のこと、栄養士(管理栄養士)との協調体制です。栄養士(管理栄養士)を中心に調理員と定期的に子どもたちへの適切な食事提供や衛生管理について学習会を設け、日々、精進と研鑚をしていく姿勢が求められます。
調理室において、栄養士(管理栄養士)と調理員の関係を端的に表現すると、栄養士(管理栄養士)の管理栄養に基づいた食生活計画を調理員が実行していく関係です。
従って、栄養士(管理栄養士)は、調理員の実行力を常に把握し、時には、アドバイスを行い、不適切な実行に関しては、指導を行うこともあります。それらの行為は、全て、子どもたちの口に入る物を扱っていると言う緊張感から派生するのが原則です。仮に人間関係のもつれから感情的な対応が行われた場合、本末転倒と言うことになります。
調理員が栄養士(管理栄養士)を従わせると言う関係は、一般常識としてあり得ません。仮にその様な事実が合った場合は、非常識な事実として捉えて下さい。
栄養士(管理栄養士)の雇用が決まったら、すぐ、調理室に入る状況は、結果的には、栄養士(管理栄養士)が調理室のペースに巻き込まれてしまい、本来の栄養士としての業務が停滞してしまうという危険性があります。栄養士(管理栄養士)が十分な準備を整えた上で、調理員との関係構築が出来るよう、準備期間を設けて調理室に入るようにしたほうが妥当でしょう。
第一段階…検便(細菌検査)を実施し、異常なしの結果後、調理室に足を踏み入れる。
第二段階…雇用月は、前任者の献立表と発注表で進め翌月分からの献立表と発注表を作成する。
第三段階…調理室の現状把握後より本格的に管理栄養業務を開始する。
新しく来た栄養士が急いで自分のペースを構築しようとすると「今までのことを何も知らないのに口を挟むな」等の感情的なやりとりが展開されると予測でき、不必要な人間関係のもつれに発展します。初勤務月については、予定献立表があり、それに伴う発注業務と調理業務が進行されており、勤務ローテーションも組まれています。まずは、調理の段取り、衛生管理、食育への意識等の現状把握に努めます。
栄養士の主な業務
・献立表の作成。食育計画の作成。
・食料品の発注、配分。
・調味料、乾物等の管理配分。
・保存食(防災用)のストック管理。
・調理責任者。特に衛生管理については、十分配慮します。
・行事時に於ける献立計画、調理責任、記録を行います。
・嗜好調査を年2回実施。
・検便の回収等、保健所との連絡調整。
・食事と子どもの健康、脳の発達、心の発達への影響について研究。
・給食会議を月1回実施運営。
・調理員の調理状況、特に衛生管理や調味料の使いすぎ、冷蔵庫の状況等を定期的にチェックします。
・給食新聞の発行。(食べ物や栄養について)
・その他
12 調理室業務例
大切な「食」を担っている調理室に関する概略であり例ですので、参考程度に捉えて下さい。各福祉施設の調理場毎にシステムが違うことをご理解下さい。
業務の流れ
午前中
・調理室解錠
・残留塩素濃度測定(水質検査)
・調理台等消毒、食材料・調味料確認等準備
・朝食・弁当調理・加熱
・配膳
・夕食食缶洗浄
・保存食の採取及び保管
・残菜の処理等片付け
・調理機械及び器具の洗浄・点検
・栄養士との打合せ(昼食・夕食・翌日朝食)
・全体朝礼
・調理室の清掃・点検
・朝食食缶等洗浄
・調理台等消毒、食材料・調味料確認等準備
・昼食調理
*余裕があれば、夕食の仕込み
・昼食加熱(蒸す、煮る、炒める、揚げる、焼く)
・配膳
・保存食の採取及び保管
・残菜の処理等片付け
午後
・調理台等消毒、食材料・調味料確認等準備
・食材料の点検、計量、取り出し
・食材料の下洗い、皮むき等々の仕込み
*翌日朝食・弁当の下準備
・昼食食缶等洗浄
・定期的な清掃消毒及び拭き取り棚卸し等
*冷凍冷蔵庫、乾物倉庫、調理室等
・夕食加熱(蒸す、煮る、炒める、揚げる、焼く)
*揚げ物、焼き物メニューの時は人員を確保
・配膳
・保存食の採取及び保管
・調理機械及び器具の洗浄・点検
・残菜の処理等片付け
・残留塩素濃度測定(水質検査)
・調理室施錠
主な測定項目
・残留塩素濃度測定(水質検査)
・残菜量の計量
・検品時、冷凍、冷蔵食品は、箱内温度を非接触温度計で計測
・特に冷凍食品を加熱した場合、中心温度を測定
・塩加減は、勘に頼らず塩分濃度計で測定
衛生管理業務
毎日
・調理台、シンク、仕分け用ザルの消毒
・食器、スプーン、箸、食缶類、盛り付け用具等の洗浄及び点検
・洗浄済み食器、スプーン、箸、食缶類を確認し、消毒
・調理終了後の機械、器具類の洗浄及び点検整備
・作業終了後の調理室、検収室、準備室、冷凍冷蔵庫、調味料倉庫等の清掃及び整理整頓
・調理室、検収室の廚芥及び残菜の処理
・廃油、空き缶、空き箱等の指定場所への移動
週1回以上
・冷凍冷蔵庫の内壁、天井及びラックは、毎週1回拭き取り
・フード、食器食缶消毒保管庫、機器の消毒は、毎週1回拭き取り
月1回以上
・調理室、検収室、準備室の腰壁、棚等は、月1回以上消毒及び拭き取り
・乾物倉庫の棚卸しを、毎月1回行う。その際、棚拭きを行う
・調理室、検収室、準備室のガラスは、月1回拭き取り
・グリース阻集器の清掃(月1回)*性能により回数が変化
調理及び衛生管理以外の業務
・検収済みの食材料の検収室、冷凍冷蔵庫、乾物倉庫への収納
・乾物倉庫の棚卸しを、毎月1回行う。その際、棚拭き
・検食、保存食の採取及び保存食の保管(2週間)
・食事終了後、食缶、残菜等を調理室へ移動
・調理室の鍵の管理及び開閉
・献立変更があった場合、管理栄養士へ報告
最も重要な原則は、「人の口(身体の中)に入るもの」を取り扱っていると言う緊張感です。また、子どもたちの成長に大きな影響力を持つ「食」を大切に考え、日々、工夫と精進を重ねていく姿勢が求められます。
調理室では、子どもたちの健康と成長、そして安全を守るために、様々な業務を日々担っていますが、その大変さは、意外と知られていません。
もし、調理員さんと関わる機会がありましたら、是非、労いの言葉を掛けて下さい。
13 主任業務について
「主任」は、職員のリーダー的存在であり、管理職と一般職の仲介者の役を担います。つまり、一般職員の気持ちも分かれば、管理職の気持ちも分かる存在であり、かつ、双方の職責も理解していなければいけません。そう言った意味では、職場の中で重要な立場であり、難しい職責を担っていると言えます。
主任の業務内容
・各種記録用紙の準備。所定の位置に配置、配布します。
ケア記録表、研修報告書、支出伺、日誌等
・各種記録の回収。確認後、施設長の確認を貰います。
・各種記録の記入の仕方や事務手続き上のシステムを職員に教え徹底します。
・職員の心身の状態を常にチェックし適切な業務配分を臨機応変に行います。
・職員のリーダー的存在であり、職員間の人間関係の調整、職員からの相談受付やアドバイス等を行いチームワークの調整を行います。
・行事等、計画→実施→振り返りを徹底すると共に、業務の役割配分を行い、役割の進行状況をチェックし、時には、アドバイス、注意等行いながら職員の育成を行います。行事計画書、実施報告書の整理を行います。
・日常の処遇の中で職員の育成を行います。
・職員が外部の研修会に参加した場合、研修報告会を実施します。
・施設長不在時の責任者代行を担います。
主任指導員
・児童相談所関係書類の作成提出。
・児童福祉施設研究会との連絡調整。
・児童指導員実習生の受入れ指導。学校との調整、書類の記入提出。
・防災関係(消防署との連絡調整)の書類作成。
・ボランティアの受入れ調整担当者。
・グループワークのリーダー。
・児童指導員打合せ会の実施。勤務ローテーションの調整。
・児童指導員の業務(行動)把握と育成。
・児童指導員業務日誌の記入。
・職員会議の議事作成。
・次年度、事業計画に関わる書類作成。(3月)防災関連、年間行事計画書、年間研修予定表、行事関係予算申告書他
・進路・進級関係の調整。幼稚園、小学校、中学校、高等学校との連絡調整。
・園だよりの作成、配布。
・子ども会の招集、実施。記録者、司会者の選任。
・児童への情報提供の徹底。(土日祝祭日の予定を2週間前には、伝達・広報します。)
・児童指導員の育成。マンパワーの強化に力を注ぎます。(各種研究会の計画実施)
・その他
主任保育士
・保育士会との連絡調整。
・保育実習生の受入れ指導。学校との調整、書類記入調整。
・日中保育の運営管理。
・部署の運営管理、現場責任者。
虐待や感情による児童への対応について予防あるいは、指導を行います。衛生管理等、確実に行われているか光熱水費等の無駄使いをしていないか生活の基本になる指導を行います。
・保育士打合せ会の実施。休暇表調整。
・日誌のチェック。ユニットでの引継ぎ事項のチェック及び指導。
・次年度、事業計画に関わる書類作成。(3月)ユニット運営マニュアル、保育士関係予算(衣類、日用品他)申告書他
・日用品、衣類等の管理責任者。(給食関係は、栄養士に任せます。)
・保育士の育成。マンパワーの強化に力を注ぎます。(各種研究会の計画実施)
・その他
14 中間職(係長・課長級等)の業務
社会福祉法人毎に組織図の構成は、違いますので、全ての児童養護施設に係長・課長級の職責があるということではありませんが、参考のために業務内容を列記しています。
運営管理業務
・勤務ローテーション表清書(各部署より下書き収集)
・情報収集と職員への周知徹底(週報作成配布)
・月間行事予定表作成配布(児童用月間行事予定表含む)…前月に配布
・ケース記録チェック(全児童分、毎月)助言及び講評
・職員の勤務状況等全体掌握(助言及び注意含む)
・職員からの相談受け入れ(場合によっては、業務調整)
・児童動静全体掌握(夕方の入浴支援及び夕食同席含む)
・新任職員研修の企画及び実施
・職員会議及び内部運営委員会の議事進行(議事内容及び資料事前配布含む)
・ボランティア受け入れ調整
・職員オリエンテーション(4月)の資料作成(年間行事予定表・年間研修予定表等)
・行事計画等、職員からチェックを求められた場合のチェック作業
・緊急時の緊急出勤(特に職員より呼び出しがあった場合)
・行事等の片づけが遅くなる場合、終了するまで残り、時には労いの言葉を掛ける。
・児相とのケース検討会への出席(ケースワーカー或いは担当職員からの要請を受けて)
・保護者に対してケースワーカー或いは担当職員から要請があった場合、対応する。(心理的配慮が必要な保護者からの電話等)
・児童が触法行為や家出を行った場合の戒めの対応を行う。
・要望解決第三者委員会のコーディネート
・幼稚園迎え、通院、小規模児童養護施設宿泊等、人員不足への対応。
・環境整備及び営繕
・「現場は主任を中心にまわっていく。」が組織として理想であり、施設長と主任との中間的役割を担う。
施設長補佐的業務
・事業計画書・事業報告書案作成
・中間事業報告書案作成(中間行事実施報告書及び中間研修実施報告書含む)
・指導監査に向けての役割分担及び資料準備
・各学校実習連絡会出席
・施設見学者受け入れ調整
・緊急時の判断及び指示(施設長不在時)
・緊急対策本部設置に於いて、施設長不在時は、本部長業務を行う。
・職員求人採用試験等の段取り調整
・行事実施及び準備、片づけには、極力最初から参加し、児童及び職員の安全を確認。
・卒業生来園時の対応
児童養護施設で働くあなたへ、あなたは、どのような職種、あるいは立場で働いていますか。役割分担は、業務を効率的に進めていく上で必要不可欠ですが、同時に、各役割の相互協力が重要です。
また、自分の職種や立場以外の業務内容を理解しておくことも大切なことです。チームワークを構築する上で最低限必要な要素と言えます。
普段の業務については、極力業務省力化に努め、少しでも子どもたちと関われる時間を増やす努力を怠らないように心がけましょう。
15 自己チェックリスト
OJT(On-the-Job Training)は、職務遂行を通じて管理者が部下に対し、意図的・計画的な指導・育成をマンツーマンで行うことと定義されていますが、簡単に表現すると、仕事を通じた職場での教育訓練となります。
そのOJTの内容には、部下及び管理職のスキルアップを図る、様々なプログラムが含まれています。もちろん、プラン・ドゥ・シーの理念もあり、数々のチェックシートが用意されています。
児童養護施設で働くあなたへ、子どもたちへの対応の中で、「反省しなさい」「自分のやったことを振り返りなさい」「同じ過ちを何度も繰り返すな」等々の言葉を発したことがあることでしょう。しかし、考えてみて下さい。あなた自身は、自分の仕事を系統的にチェックし振り返りを行っていますか。あなたが子どもたちに助言していることを、そのまま、自分自身にも助言を与えて下さい。子どもたちは、敏感です。「大人は勝手なことばかり言う」「僕たちに注意するけれど、自分はどうなんだ」との、子どもたちの声が聞こえてきませんか。
OJTに含まれるチェックシート内容を児童福祉用に一部文言を変えてリスとしましたので、自己チェックに役立てて下さい。チェック項目が、全て○であれば、あなたは、立派な社会人であり、子どもたちの良き支援者となり得ていることでしょう。もし、×があれば、○に替わるよう、自己啓発しスキルアップを図りましょう。
1)処遇面でのチェックリスト
「支援目標設定」に関してのチェックリスト
1.目標は支援計画(児童の成長、環境の変化、情緒的特性等)に基づいて設定されている。
2.的確な現状分析に基づいた目標になっている。
3.同僚職員との間で目標項目の差がある場合、その理由など十分に話し合い、両者納得の上、設定している
4.目標レベルに対して同僚間で意見の相違がある場合、その理由など十分に話し合い、両者納得の上、設定している。
5.目標には自分の成長(児童への理解度を深める等)を促すテーマが取り入れられている。
6.目標達成に向けて、担当者が優先的に支援すべき内容があげられている。
7.目標は、達成度(児童の成長)が具体的に測定できる表現になっている。
8.目標は、ケース会議等で同僚職員の合意を得ている。
9.目標達成の阻害要因を想定し、その代替案を十分検討している。
10.目標が同僚職員や関係機関との協力で推進される場合、自分と同僚職員、関係機関のかかわり方を十分に詰めている。
ほめ方と叱り方のチェックリスト
ほめ方チェック
1.あなたは、こどもの良い所や長所を見つけようとしていますか
2.あなたは、こどもの良い点に気づいたら具体的な事実をそえてほめられますか
3.あなたは、気持ちをことばだけでなく態度でも表現できますか
(肩をたたく、握手するなど)
4.あなたは、こどもを皆の前でほめることができますか
5.さらに頑張ろうと励ましていますか
叱り方チェック
1.あなたは、こどものまちがいや失敗に気づいたら叱ることができますか
2.あなたは、感情的にならず冷静に叱ることができますか
3.あなたは、説教ではなく簡明に叱ることができますか
4.あなた自身、叱った後で気持ちの区切りをつけることができますか
5.あなたは、叱った後きちんとフォローし、こどものやる気を削がないようにしていますか
6.あなたは、叱るこどものトラブルの起こった状況や環境、そしてこどもの気持ちや能力を把握していますか
7.あなたは、叱ったこどもと一緒にトラブルの原因を探求していけますか
8.あなたは、原因を発見した後の対処や次のトラブル防止への助言を的確にしていますか
2)社会人としてのチェックリスト
勤務態度のチェックポイント
1.執務中は仕事に集中している。
2.私用でやたらに職場を離れるようなことはしない。
3.書類の取り扱いには十分注意する。
4.職場にふさわしい身だしなみを心掛けている。
5.机やロッカー等身のまわりの整理整頓を心掛けている。
6.物品を大切に、公私の区別をつけている。
7.私用の電話はつつしみ、長電話はしない。
8.守秘義務には十分注意している。
9.職場の人間関係を良好に保っている。
10.職場を明るく保つよう努力している。
きちんと度チェックポイント
1.あなたは、社会人らしい落ち着いた服装をしていますか。
2.あなたは、清潔さ(髪・顔・手・爪)に気を配っていますか。
3.あなたは、社会人らしいことば遣いをしていますか。
4.尊敬語・謙譲語・丁寧語を正しく使い分けていますか。
5.敬称は、正しく使っていますか。
6.あなたは、どんなときにも、笑顔で丁寧な応対に気をつけていますか。
7.あなたは、横柄な態度の応対にならないように気をつけていますか。
8.あなたは、誰にも礼儀正しい応対ができますか。
9.あなたの机の上や、机の中は、いつも整理・整頓されていますか。
10.あなたに必要な書類は、常に分類整理されていますか。
身だしなみのチェックポイント
1.常にさわやかで活動的な身だしなみを心掛けている。
2.服装はいつも清潔である。
3.社会人らしい服装やアクセサリーを心掛けている。
4.履き物は活動的なもので、常にきれいで磨いてある。
5.髪かたちは活動的に整えられている。
6.男性はヒゲ、女性は化粧に十分注意している。
7.手の指やツメはいつも清潔である。
8.口臭などで人に不快な思いをさせることはない。
9.二日酔など体臭にも気をつけている。
10.おしゃれということを常に考えている。
指示の受け方チェックポイント
1.名前を呼ばれたら「ハイ」と明るく返事をしている。
2.メモと筆記用具を持って指示を受けている。
3.先入観を捨て、しっかりと聞いている。
4.指示の途中で発言していない。
5.5W1Hでチェックしながら、内容を確認している。
6.分からないときはその場で確認している。
7.日時、固有名詞は必ず確認している。
8.指示が重なったときは、自己流に判断せず、施設長・主任に確認している。
9.受けた指示は必ず復唱している。
10.希望を示し、期待に応える旨を明らかにしている。
報告の仕方チェックポイント
1.指示を受けた仕事は必ず報告している。
2.報告は必ず指示・命令者に行っている。
3.まず、結論から報告している。
4.経過や状況の説明は、事実に基づき簡潔に行っている。
5.事実と意見を明確に区別している。
6.中間報告を怠っていない。
7.悪いことほどスピーディに報告している。
8.理解しやすいようにデータを活用している。
9.状況に合わせ、口頭、文書の使い分けをしている。
10.グループウェア・Eメールを効果的に活用している。
3)主任等、リーダーのチェックリスト
職員育成チェックリスト
1.仕事の割り当ては職員一人ひとりの能力、適性に合わせて実施している。
2.職員一人ひとりの特徴(長所短所、性格等)をよく把握している
3.職員と自己覚知について、よく話し合う機会を持つようにしている
4.仕事においてほめることと叱ることの使い分けはできている
5.感情的にならず常に冷静に接して対処するように心がけている
6.人材育成の重要性、必要性をよく認識し、自ら実践している
7.職員育成計画の進捗状況には常に気を配っている
8.職員育成計画の達成度を定期的にチェックしている
9.うまくいかないとき(スランプも含めて)は安易に放置せず、原因究明と対策にあたっている
10.職員の成長を心から喜び、その喜びを表現することができる
会議、ミーティングの心得チェックリスト
1.目的を的確に掴んでいる
2.参加職員は明確にしている
3.参加職員には予め、必要情報は的確な形で伝えている
4.協力を必要とする人には予め根回しを試みる
5.予想される異論に対する検討を多角的、多面的に行っている
6.目的達成に対する効果、影響力などは十分に検討している
7.開催時期など、参加メンバーの負担にならない配慮をしている
8.時間などを十分に気を使っている
9.場の雰囲気づくりにも心掛けている
10.会議、ミーティング計画書を作成して、会議、ミーティングに臨むようにしている
11.会議、ミーティングの目的(主旨)を参加職員に共有化させている
12.会議、ミーティングの運営方法をはかったうえで進めている
(例えば、発言時間は1人何分以内などの取り決めを行う)
13.役割分担(司会、書記、時間係など)を決めている
14.異論の声も十分出させている
15.納得のいくまで話し合うことをすすめている
16.会議、ミーティングが主題から外れたり、停滞していたら、その都度、軌道修正の働きかけをしている
17.発言の少ない、無い人への働きかけも怠らない
18.時々、いままでのやりとりを要約して確認などし合う
19.一方的な形で進行させないよう配慮する
20.決定事項を要約し、参加職員と確認し合う
指示・命令・連絡のチェックリスト
1.指示・命令は自分の言葉ではっきり伝えている。伝わりにくいところは、ツーウェイ(双方向のコミュニケーション)をやっている
2.指示・命令事項は、5W2Hを明確に示している
3.指示・命令の必要性を納得させている
4.相手の理解度を確認しながら指示・命令を行っている
5.質問できる雰囲気づくりを心掛けている
6.連絡は5W2Hを確認している
7.伝えた「つもり」で終わらず確認している
8.連絡の必要性を相手の立場で考えている
9.重要事項は文書で連絡するようにしている
10.収集した情報は有効活用を心掛けている
児童養護施設で働くあなたの職場において、アンケート方式のプリントを作成し、職員に回答して貰い、その結果を集計し、今後に生かしていく取り組みを進めていく、そのことを通して、職員一人一人の振り返りだけではなく、職場全体の振り返りにも繋がり、それが、職場の活性化に繋がっていくことによって、子どもたちが大人への安心感・信頼感を取り戻していく、きっかけになっていくことでしょう。