第11話:忘却の図書館 ―歴史の奪還―
【追加・詳細武器能力:歴史の守護者】
高清水凉子 論理・校正拒否(ロジック・プルーフリーディング・リジェクト)
自らの過去を「不完全な未完の原稿」として肯定し、外部からの改変(検閲)を跳ね返す認識防壁。自身の存在主張をエネルギーに変え、周囲の偽りの設定を無効化する 。
高清水凉子 論理・終焉の一筆(ロジック・ファイナル・ストローク)
全ての魔力、論理、感情をバトンに集束させ、偽りの歴史を綴る中枢を貫く。対象を歴史の「捏造」ごと粉砕する 。
北條孝子 紅蓮・溶断の舞(メルティング・ダンス)
炎の竜巻となって突撃し、熱量計算を狂わせる敵の装甲を物理的に溶解させる。熱に「怒り」を乗せることで、文字による封印を焼き切る 。
カイ 言霊・穿孔(ドリル)
螺旋状の衝撃波。物理無効の「設定(ルール)」そのものを概念ごとぶち破り、強固な防壁に風穴を開ける 。
ビブリオ 削除(デリート)
赤いインクの奔流。触れたものの「防御」や「機能」を「不適切な記述」として定義から抹消する 。
ビブリオ 検閲(プロテクト)
辞書型の盾。あらゆる物理・魔法攻撃を「文字」へと変換し、ページの中に封印する 。
シーン1:インクの雨が降る街
(神田神保町・昼) 古書店が立ち並ぶ街に、鉄錆の臭いが混じる奇妙な小雨が降り注いでいた 。 高清水凉子は、購入したばかりの19世紀の物理学論文集を開く。しかし、そのページからは活字たちが意志を持つ虫のように蠢き、滑り落ちていく 。地面に落ちた文字は黒いインクの染みとなり、雨水に溶けて消えた。
凉子:「文字が……逃げていきますわ。まるで、誰かが歴史を『校正』してるみたいやわ」
詫間亨(傘を差し出しながら):「この雨にはナノマシンが含まれた『溶解液』が混ざっています。記録媒体だけを狙い撃ちにして分解しているんです」 街行く人々のスマホ画面からも、大切な写真やメールが音もなく消去されていく 。
凉子:「知識は人類の結晶です。それを勝手に『洗濯』するなんて……文名に対するテロリズムですわ!」
シーン2:消えゆく遺言
(陽だまり探偵事務所)
カイの元に、女子大生から「祖父のアルバムが真っ白になった」という悲痛な電話が入る 。
カイ(昨日の新聞を手に取り):「昨日俺たちが渋谷で戦った記録まで、『フラワーフェスティバル大盛況』に書き換えられてやがる」 不都合な真実や痛みの記憶だけが、世界から削除されている。
クロ(鼻をひくつかせ):「消毒液の匂いだ。この世界、まるごと『漂白』されてるぞ」
カイ:「俺の人生、勝手にハッピーエンドにされてたまるかよ。……行くぞ、この街の『編集長』に文句を言いにな」
シーン3:冒涜されたグリモワール
(北條邸・地下書庫)
北條孝子は、自身のコレクションである魔導書『ソロモンの鍵』が、「みんなと仲良くしましょう」という道徳の教科書のような内容に書き換えられているのを見て激昂していた 。
孝子(本を焼き捨てながら):「わたくしの魔術の深淵を……ゴミに変えるなんて! ガーディ、犯人を八つ裂きにして、その血で書き直してやりますわ!」
シーン4:忘却の管理官
(神保町・すずらん通り上空) ビルの屋上ほどもある巨大な「本」が空中に浮かび、街からインクの雨を吸い上げていた 。その中から、灰色スーツにモノクルの男、記録官ビブリオが現れる 。
ビブリオ:『人類の歴史はエラーとバグの累積だ。汚らわしいデータを消し、美しい物語へ書き換えてあげよう。凉子くん、君の殺戮の経歴も消してあげようか?』
凉子:「断ります。わたくしの過去は今を作る『骨格』です。それを抜かれたら、ただの肉人形になってしまいますわ!」
ビブリオが万年筆から赤いインクの奔流を放つ。それは凉子のバトンの防御フィールドを概念ごと溶かしていく 。
ビブリオ:『私の編集権限の前では、君たちの暴力など誤字脱字に過ぎないのだよ』 ビブリオが指を鳴らすと、街全体が巨大な「迷宮図書館」へと変貌し、三人は分断された 。
シーン5:赤ペンの迷宮
(迷宮内部・凉子の戦場) 凉子の前に、頭部が「×」の形をした「赤ペン人形」たちが現れる 。 校正係:『修正、修正、修正……』
ビブリオ(ホログラムで現れ):『なぜ不完全に固執する? この「高清水凉子・完全版」の中なら、君は一度も間違えず、一度も傷つかない完璧な存在になれるというのに』
凉子(本を突き返し):「その本、たぶん一行で終わってしまいますわ。『彼女は何もしなかった』。……それだけです」
凉子はバトンを掲げ、全身から青い光を放つ。
凉子:「間違うからこそ思考が生まれる。傷つくからこそ論理が磨かれる! わたくしは死ぬまで書き続けられる『未完の原稿』でありたいんです!」
凉子:「『論理・校正拒否(ロジック・プルーフリーディング・リジェクト)』!!」 意志の力が物理的な検閲を押し返し、周囲の偽りの本棚を焼き払った 。
シーン6:不協和音の合流
迷宮の最深部、巨大な活版印刷機が鎮座する広間で三人が再集結する 。
孝子(煤だらけで):「随分とインクまみれですわね、天使様」
カイ:「俺の人生、勝手に洗濯してんじゃねえよ!」
ビブリオは印刷機のレバーを引き、空間を白紙に戻す「修正液の津波」を放つ 。
凉子:「わたくしたちはインクの染みやない! 誰にも消させまへん!」 凉子が展開した「論理・存在証明」のドームが白い波を霧散させ、印刷機の心臓部「編集水晶」を露出させた 。
シーン7:歴史の奪還(クライマックス)
凉子:「お嬢様が装甲を溶かし、カイさんが防御を貫く。最後にわたくしが『廃刊届』を叩き込みます!」
孝子:「『紅蓮・溶断の舞』!」 カイ:「『言霊・穿孔(ドリル)』!」
炎と拳が道を作り、最后に凉子が空中へ跳ね上がる。
凉子:「歴史は誰かに書き換えられるもんやない! 自分自身の足跡で綴っていくもんですわ!」
凉子:「『論理・終焉の一筆(ロジック・ファイナル・ストローク)』!!」 バトンが編集水晶を貫き、印刷機は大爆発を起こして崩壊した 。
シーン8:雨上がりの真実
(神保町・夕暮れ) インクの雨が止み、夕日が街を照らす。白紙だった古書には、凄惨な合戦の記録も、悲しい恋の結末も戻っていた 。
凉子(本を愛おしそうに撫でて):「汚くて悲しい記録かもしれません。でも、これが真実。わたくしたちが生きた証拠ですわ」
カイ(羊羹をかじりながら):「やれやれ、また報酬が消えちまったな」
しかし、消滅したビブリオが最後に残した暗号通信が、亨の端末に表示される 。
暗号:『次は「信仰」を書き換える。担当者:聖女(セイント)マリア』 不協和音を奏でる三人の戦いは、さらに精神の深い領域へと踏み込んでいく。
(第11話・完/最終話へ続く)