第4話:論理の雷火 ―蒼き秩序の覚醒―
【追加・詳細武器能力:西の秩序(ロジック)】
高清水涼子 天界式・電磁ショックバトン
普段はヴァイオリンケースに擬態した炭素合金製ケースに収納されている 。白銀に輝く伸縮式の警棒で、使用者の意志(論理)を青白い高周波プラズマへと変換する 。物理的な「破壊」ではなく、存在の構成式を書き換える「消去」を本質とする 。
高清水涼子 論理崩壊(ロジック・ブレイク)
敵の構造を瞬時に演算し、物理的・霊的に最も脆弱な一点へ雷撃を叩き込む。模倣された回路や混沌のエネルギーを内側から焼き尽くす 。
高清水涼子 論理消去(ロジック・デリート)
バトンから目に見えない高周波パルスを放射し、敵の結合エネルギーそのものを分解する。対象は音もなく砂のように崩壊し、存在した事実ごと「処理」される 。
詫間亨 ナイトオウル(Night Owl)
詫間イノベーションズ製、対霊的・電子的ステルス車両。磁気浮上システムにより摩擦音をゼロにし、光学迷彩で夜闇に完全に溶け込む 。フロントガラスはHUD(ヘッドアップディスプレイ)化されており、次元境界の揺らぎをリアルタイムで解析・投影する 。
詫間亨 霊的・電子的ジャミング
拠点を保護する高強度の結界。外部からの「混沌」の影響を遮断し、居住者の精神安定を図る防壁 。
シーン1:神戸・高清水邸・音楽室(昼)
一月の終わり、瀬戸内海を一望する白亜の邸宅 。 静謐な空気が満ちる音楽室で、高清水涼子は目を閉じ、ストラディバリウスを構えている。 奏でられるのはバッハの『シャコンヌ』。数学的なまでに正確な旋律が、完成された日常を象徴している 。
しかし、曲が情熱的な終盤に差し掛かった瞬間――。 ブツンッ! 鋭い音と共にヴァイオリンのE線が弾け飛ぶ 。 切れた弦は涼子の頬を掠め、一筋の赤い線を作った。涼子は痛みではなく、その「非論理」な現象に眉をひそめる。
涼子:「……おかしいわ。弦の張り替えは昨日、亨さんが完璧にしてくれたはずやのに」 切れた弦の断面は、腐食したように黒く変色していた 。 涼子:「……美しゅうない」 その言葉を呟いた瞬間、涼子の視界に一瞬だけノイズが走る。 音楽室の壁が消え、灰色の荒野と、嘲笑う誰かの声が重なった。 謎の声:『―――壊れちゃいなさいよ、お人形さん』
シーン2:地下ラボラトリー
邸宅の地下深く。無機質な金属と青白いホログラムが支配する、最先端技術の要塞 。 詫間亨はモニターを見つめ、苦渋の表情を浮かべていた。 画面には日本列島の地図。関東を中心に、次元境界が激しく揺らいでいる 。
亨:「数値が上がっている……共鳴し始めているのか」 サブモニターには、音楽室で立ち尽くす涼子の姿。 亨は彼女を戦いから遠ざけるため、記憶喪失という現状を維持し、邸宅周辺の結界を最大まで引き上げていた。しかし、彼女の魂は本質的に「秩序」の塊であり、世界の「混沌」に対して天秤のように反応してしまう 。
突如、アラームが鳴り響く。
音声ガイダンス:『警告。大規模な空間歪曲を検知。発生源、東京湾岸エリア』 衛星画像が映し出したのは、関東の空を覆い尽くし、西へと浸食する紫色の極光(オーロラ)だった 。
シーン3:悪夢と覚醒
その夜。涼子は再び「あの場所」の夢を見ていた。 灰色の砂、空虚な空。目の前には巨大な黒い亀裂 。 振り返ると、赤い炎の瞳を持つ黒いドレスの少女(北條孝子)が、千枚通しを手に立っている 。
少女:『退屈していましてよ?堕天使様。……早く思い出して。私を殺したいほど憎んだ、あの熱を』 涼子:「あなたは……誰……?」 涼子が手を伸ばした瞬間、少女は赤い炎となって爆ぜた。 涼子:「っ!!」
叫び声を上げて目を覚ます涼子。部屋のカーテンの隙間から、月明かりではない「紫色」の光が差し込んでいた 。 駆け込んできた亨に対し、涼子は震える声で窓の外を指さす。
涼子:「空が……泣いとうわ。美しゅうない色が、世界を塗りつぶそうとしとる。……亨さん、隠さんといて。あれは、何なんですの?」 その瞳には、真実を見極めようとするかつての「青い」光が宿っていた 。
シーン4:忘れ物
地下ラボへ降りた涼子の前に、一つの炭素合金製ケースが置かれる 。
亨:「君の『忘れ物』です。……君は戦士でした。秩序を守り、非論理的な悪を断罪する、孤高の翼」 亨は彼女が再び傷つくことを恐れ、シェルターに留まるよう諭す。しかし、涼子は静かに首を振る。 涼子:「あきませんわ、亨さん。震えて隠れとるなんて……それは、一番『美しゅうない』生き方やわ」
涼子の指が、未教示のパスコードを叩く。『L-O-G-I-C』。 開いたケースの中には、ヴァイオリンではなく白銀の「電磁ショックバトン」と「純白のコート」 。 バトンを握った瞬間、青白い電流が涼子の腕を駆け上がり、脳裏に数式と戦術の記憶が奔る 。
涼子:「亨さん、準備をお願いします。……待っててや、赤いの。今度こそ、決着つけたるから」
シーン5:東名高速道路・深夜
深夜二時。死に絶えたハイウェイを、ステルス車両「ナイトオウル」が音もなく疾走する 。 重力が不均一になり、時間の流れさえ局所的にズレる悪夢のような光景 。 御殿場ジャンクション手前で、前方の空間が消失し、紫色の霧の中から「ナイトオウル」を模倣した多脚の怪物が現れた 。
涼子:「落ち着いてください、亨さん。技術(テクノロジー)に使われるのと、使いこなすのとでは、次元が違いますわ」 涼子は車を降り、冷たい風に髪をなびかせる。 怪物が放つ紫色のエネルギー弾を、彼女は脳内で分解・計算し、最小限の動きで回避した 。
涼子:「……隙だらけですわ」
バトンのスイッチを入れ、青白いプラズマを収束させる。 涼子は地面を蹴った。人間の動体視力を超える加速で怪物の懐へ潜り込む。
涼子:「『論理崩壊(ロジック・ブレイク)』!」 バトンが怪物の接合部を貫き、内部から混沌のエネルギーを焼き尽くす。爆発した黒い車体は霧となって消えた 。
シーン6:腐食する富士と川崎の沈黙
御殿場を抜けた先、彼らが目撃したのは、山頂が雪ではなく赤黒い光に覆われた「富士山」だった 。 火口から立ち昇る紫色の煙が、関東全域に毒を供給している 。
涼子:「……ええ、覚悟ならとっくにできてますわ。それに、あっちの方角から『不愉快』な匂いがしますねん。焦げ臭くて、鉄錆のようで……」 東から進撃してくる「北條孝子」の気配。記憶はなくても、魂が宿敵との不協和音を求めていた 。
午前三時。ナイトオウルは川崎の臨海工業地帯へと滑り込む。 飴細工のように曲がった配管、逆さまに静止するマンホールの蓋。物理法則への冒涜が広がるカオスな光景 。 立ちふさがる怪物の群れに対し、涼子は車のドアをわずかに開け、バトンの先端を外気に晒した。
涼子:「『論理消去(ロジック・デリート)』」 音も光もなく、前方の一群が砂の城のようにサラサラと崩壊する。存在した事実そのものを消去する、冷徹な処理 。
シーン7:集結、そして激突
工場地帯を抜け、埋め立て地の最深部。 そこには世界を蝕む巨大な亀裂があった。東には爆炎を背負った北條孝子。南にはボロボロの軽バンから降りたパーカーの少年(カイ) 。
涼子:「……あの子らが、第三の極、ですか」 会話はない。だが、互いの力が拮抗し、触れれば爆発するような緊張感が広場を支配する 。 その時、亀裂から巨大な「腕」が咆哮と共に現れ、三勢力をまとめて圧殺しようと振り下ろされた 。
涼子:「行きますわよ、亨さん!わたくしの『論理』で、あの混沌を……書き換えてやりますわ!」 涼子が地面を蹴った瞬間、東からは赤い炎が、南からは不可視の衝撃波が放たれた。 三位一体の激突。記憶を失った元堕天使は、再び戦いの空へと舞い上がった。
(第4話・完/第5話へ続く)