第7話:贖罪の天秤 ―罪を背負う誇り―
【追加・詳細武器能力:贖罪の定義】
カイ 言霊・虚無の鉄槌(ヴォイド・ハンマー)
千年の地獄で培った「無に帰す力」を拳に集束させる 。概念的な「仮面」や「偽り」を物理的に粉砕し、対象の存在意義そのものを否定する一撃 。
北條孝子 紅蓮・焦熱地獄(バーニング・プライド)
自身が犯してきた殺戮や過ちを「誇り」として肯定することで発動する強化型オーラ 。周囲を縛る概念的な重圧(呪い)を、圧倒的な熱量によって物理的に焼き払う 。
高清水涼子 論理・重力解除(ロジック・アンチグラビティ)
敵が操作する空間の重力定数を一時的に書き換え、無効化する 。精神的な負荷を物理法則の計算によって切り離す、極めて高度な論理干渉術式 。
北條孝子 紅蓮処刑台(ギロチン・プロミネンス)
業火によって形成された巨大な刃で対象を断罪する 。単なる火炎攻撃ではなく、逃れられぬ「死刑判決」という意志を乗せた不可避の斬撃 。
典獄(てんごく) 悔恨(かいこん)の重力波
第2層の管理者の能力 。対象の深層心理にある「罪悪感」や「未練」をフックにし、魂そのものに物理的な重圧をかける呪い 。心が折れた者はそのまま圧殺される 。
シーン1:無限の螺旋
(バベルの楔・螺旋階段) 淡く発光する石段が、果てしない闇の中を上へと伸びている 。 ソラはハイヒールを手に持ち、裸足で階段を登っているが、その表情は不満げだ 。
ソラ:「ねえ、あと何階登ればいいわけ? あたしの脚線美がパンパンになっちゃうわよ!」 カイ:「文句を言うな。運動不足の解消には丁度いいだろ」
孝子:「わたくしの美意識に反しますわ。装飾の一つもない、作った者の貧相な精神性が透けて見えますこと」
涼子:「段差の比率が最悪ですわ。登る者に無意識のストレスを与えるように計算されとる……美しゅうない構造ですわね」
反発し合うお嬢様方の背後で、従者であるガ-ディと亨が、胃薬の相談をしながら奇妙な連帯感を深めている 。 突如、空気が変わり、青銅の銘板が埋め込まれたアーチが現れる 。そこには「汝、己が罪の重さを知れ」と刻まれていた 。
シーン2:展示された地獄
(第2層・凍れる時の博物館) アーチを抜けた先は、冷たい青色の光が降る大理石のホールだった 。 そこにはクリスタルのケースに封じ込められた、三人の「過去の光景」が実物大で展示されていた 。
孝子の前のケースには、廃工場で泣き叫ぶ男たちに業火で「教育」を施す、狂気的な笑みを浮かべたかつての自分の姿がある 。
孝子:「懐かしいわ。この時の彼の悲鳴、とても良い音色でしたわね」 彼女は自らの残虐な行いを、出来の良いポートレートでも眺めるようにうっとりと鑑賞する 。
涼子のケースには、荒れ果てた戦場で「バグ」として敵を冷徹に殲滅し、死体の山を築く「秩序の天使」の姿 。
涼子:「効率的な制圧でしたわ。そこに感傷を挟む余地はありません」
カイのケースには、地獄で亡者たちを無慈悲に「無」へと還す死神としての姿 。 カイ:「随分と若いな。今よりずっと殺気立ってる……若気の至りってやつだ」
ソラ(呆れ果てて):「なんなのよ、こいつら! 自分の黒歴史を『鑑賞』してんじゃないわよ!」
クロ:「罪悪感って回路が焼き切れてるか、最初から搭載されてねえ連中だ」
シーン3:贖罪の天秤
(博物館・中央) ホールが激しく振動し、床から巨大な「天秤」と、白い仮面をつけた黒いローブの巨人・典獄が現れた 。
典獄:『罪の意識なき者よ。汝らの魂に強制的な審判を下す』 典獄が巨大な槌を振り下ろすと、天秤が大きく傾き、三人の身体を異常な重圧が襲う 。
カイ:「ぐっ……身体が、鉛みたいに……!」
ソラ:「何これ……動けない……!」 それは物理的な重力ではない。魂に刻まれた「罪の重さ」を物理的負荷に変換する呪いの波だった 。 亨が涼子を支えようとするが、二人とも大理石の床に膝をつき、身体が床にめり込んでいく 。
シーン4:罪こそが我が翼
典獄:『さあ、懺悔せよ。膝を屈し、許しを請え。さもなくば魂ごと圧殺されるのみ』
極限の重圧の中、孝子が笑い声を上げた 。
孝子:「……ふふ、ふふふふふっ。神に許しを請う趣味は、ありませんの」 彼女は骨が軋む音をさせながら、片足で立ち上がった 。全身から紅蓮の炎が、重力に逆らって天へと燃え上がる 。
孝子:「わたくしは自らの意志で選び、自らの手で地獄を作った! その『誇り』を、罪などという安っぽい言葉で括らないでくださいまし!」
孝子:「『紅蓮・焦熱地獄(バーニング・プライド)』!」 炎が爆発的に膨張し、彼女を縛っていた重力波を焼き払った 。
その姿に呼応するように、涼子の瞳にも青い光が宿る 。
涼子:「同感ですわ。わたくしが切り捨てたものは、全て高次な秩序のための『必要経費(コスト)』でしたわ。それを正すのは、わたくし自身の『論理』だけです!」
涼子:「『論理・重力解除(ロジック・アンチグラビティ)』!」 バトンから放たれた雷撃が空間の定数を書き換え、重圧を霧散させた 。
カイ:「懺悔なんて地獄でお腹いっぱいなんだよ。『拒絶(リジェクト)』!」 カイの言霊が天秤そのものを揺さぶり、支配を拒絶した 。
シーン5:閉廷の鉄槌
典獄:『なぜだ……なぜ、罪に苛まれぬ……! なぜ立ち上がれる!?』
孝子:「その重さが、わたくしたちを強くする糧だからですわ」
涼子:「あなたの天秤では、わたくしたちの『価値』は測れまへん」
三人が同時に地を蹴り、典獄を取り囲む 。
孝子:「『紅蓮処刑台(ギロチン・プロミネンス)』!」 炎の刃が典獄の左腕を切り落とす 。
涼子:「『論理断罪(ロジック・エクスキューション)』!」 雷の槍が典獄の右足を貫き、膝をつかせる 。
カイ(正面から跳躍し):「閉廷だ! 『言霊・虚無の鉄槌(ヴォイド・ハンマー)』!」 カイの拳が典獄の白い仮面を直撃し、粉々に砕いた 。 典獄の巨体は自らの天秤の下敷きとなり、紫色の粒子となって霧散した 。
シーン6:夜明けを待つ背中
重力異常が消え、ホールには再び静寂が戻った 。
ソラ:「あんたたち……本当の人間? メンタル強すぎでしょ」
孝子:「当然の結果ですわ。わたくしの罪を裁けるのは、わたくしだけですから」
涼子:「過去を否定することは、今を否定すること。……悪くない実験結果ですわね」
三人は、崩れた壁の向こうに現れた「赤黒く脈動する血管の階段」を見据えた 。
カイ:「行くぞ。天辺の管理者に文句を言ってやるまでは、止まれない」
朝日が差し込む前の、最も深い闇。 三つの背中は、それぞれの「罪」を誇りとして纏い、次なる地獄へと歩き出した 。
(第7話・完/第8話へ続く)