第12話(最終話):硝子の空が砕ける時、僕らは泥だらけの明日へ
【登場人物】
カイ:陽だまり探偵事務所所長。自身の虚無を「海」へと昇華させ、世界を受け入れる 。
ひかり:事務員。泥だらけの日常を守るため、最後までカイを支え続ける 。
エル:カイを「パパ」と慕う少女。天界のシステムを超え、自らの意志で未来を選ぶ 。
高清水涼子:高清水グループ社長。親友ルミナを救うため、自らの全てを賭ける 。
ルミナ:元・天界の女王。檻を壊し、不完全な世界の美しさを知る 。
北條孝子:鎌倉の魔女。東洋の術式で最終決戦を援護する 。
詫間亨:エンジニア。科学と魔術を融合させた解析で勝利を導く 。
ソラ:カイの姉。地獄仕込みの「騒音」でシステムを撹乱する 。
クロ:死に神豆柴。泥だらけになっても家族と共に走り続ける 。
ガブリエル・ゼノ:再生した騎士。かつての敵と共闘し、天界の意志を示す 。

〇 天界・第7階層「クリスタル・パレス」最上階
(映像) 全方位に星々が瞬く、宇宙の中心のような空間 。 中央には光ファイバーとデータストリームが絡み合った巨大な「樹」のような玉座があり、そこにはルミナが半ば同化した状態で囚われている 。

ルミナ「来てくれたのね、ラジエル…… 」
涼子「ルミナ! すぐに助け出しますわ! 」
ルミナ「来ないで! システムが……『硝子の檻』が止まらないの! 私自身を『バグ』として処理しようとしている! 」

(演出) 玉座が激しく脈動し、ルミナを飲み込みながら禍々しい「機械の竜」へと変貌する 。 ルミナの上半身だけが、竜の額に埋め込まれた状態で露出している 。

システム音声『警告。管理者ルミナ・システムに「感情」という致命的エラーを確認。自律防衛モードへ移行し、全宇宙の凍結(コールド・スリープ)を強制執行する 』 機械竜(システム)『排除……排除……排除…… 』

竜の口から、触れた空間を静止させる灰色(アブソリュート・ゼロ)のブレスが放たれる 。

カイ「(ブレスを躱しながら)触れたら終わりだ。永遠に石像になっちまうぞ 」
ルミナ「お願い、私ごと壊して! 私が死ななきゃ、システムは止まらない! 」
涼子「馬鹿なこと言うてんじゃありませんわ! あなたを殺して世界を救うなんて、そんな安いドラマ、高清水の社風じゃありませんわ!! 」

〇 総力戦:システム解体オペ

涼子「みなさん! オペを開始しますわ! システムだけを切除して、ルミナを救出しますえ! 」
カイ「おうよ! 解体なら任せな! 」

(アクション) 無数のビットから放たれるレーザーの雨を、ひかりがシールドで防ぎ、クロが黒い稲妻となって撹乱する 。 ソラが特製スパイス爆弾を竜のカメラアイに投げつけ、視覚を奪う 。

孝子「わたくしが援護しますわ。『北條流奥義・八岐大蛇(ヤマタノオロチ)』!! 」 (演出) 八つの炎の龍が機械竜の装甲を焼き溶かす 。

亨(通信)『解析完了! 奴が「凍結ブレス」を吐く瞬間、胸部の排熱ダクトが開く! そこが急所だ! 』
カイ「正面上等! 涼子、合わせろ! 」

〇 決戦:泥だらけの論理(ロジック)
機械竜が宇宙をも凍らせる最大出力のブレスを溜める 。 涼子がボロボロのスーツ姿で、たった一人で竜の前に進み出る 。

涼子「不完全? 笑わせんといてください。整理整頓された部屋で一人で生きるんが完全なら、そんなんただの『在庫処分』ですわ! 」
涼子「わたくしたちは泥にまみれて、傷ついて、喧嘩して……そうやって毎日『思い出』を積み上げてるんです! 食らいなさい! これがわたくしたちの生き様(バランスシート)ですえ!! 」

(必殺技)

涼子「『論理・経営破綻(ロジック・クラッシュ)・全額投資(フル・インベストメント)』!! 」 涼子のバトンから極大の雷撃が放たれ、竜のブレスと衝突する 。 そこへカイとエルの「虚無」が融合し、黒と金の螺旋となって膨れ上がる 。

カイ「俺たちの『海』は、お前の冷たい息より深くて広いんだよぉぉぉッ!! 」
カイ・エル「『天地・虚空捕食(ワールド・ヴォイド・イーター)』!! 」

(演出) 絶対零度のエネルギーをカイが全て飲み込み、その反動を利用したカウンターの一撃が、竜の胸部ダクトへ突き刺さる 。 ドガァァァァン!! という轟音と共にシステムが崩壊し、ルミナが宙に投げ出される 。

涼子「(ルミナを空中で受け止め、抱きしめる)捕まえましたわ……。修理代、請求書にして回しますからね。一生かかって払いなはれ 」
ルミナ「(微笑んで)……最悪で、最高ね 」

〇 崩落と再突入
エネルギーを失った第7階層が崩壊を始め、全員が成層圏から自由落下する 。

ルミナ「私一人が残れば、みんなを転送できる…… 」
涼子「(ルミナの頬を強くつねる)まだそんなこと言うてますの! 置いてなんか行きまへん! 」
カイ「全員、俺につかまれ! エル、やるぞ! 」

(演出) カイの虚無が仲間を包む「繭」となり、エルの翼が推進力を与え、黒い流星となって大気圏へ突入する 。 背後では天界の残骸が燃え尽き、光の雨となって地上へ降り注ぐ 。

〇 エピローグ:雨上がりの世界
(映像:一年後) 新宿中央公園の巨大なクレーター付近には「ネオ・エデン地区」が建設され、人間と天使が共生している 。 現場監督として働くガドリエルと、技術顧問の亨が軽口を叩き合っている 。 鎌倉では、孝子がガブリエルを特別警備顧問として雇い、茶飲み友達になっている 。

〇 陽だまり探偵事務所
(映像) いかつい革ジャンを羽織ったカイと、ランドセルを背負ったエルが帰宅する 。

エル「ただいまー。ねえパパ、学校の将来の夢に『カイのお嫁さん』って書いたら、職業じゃないって言われた 」
カイ「(吹き出して)ば、馬鹿野郎! 親父みたいなもんだって言ってるだろ! 」

そこへ、豪華な着物の孝子と、パンツスーツの涼子が訪ねてくる 。 涼子の後ろには、眼鏡をかけた秘書見習いのルミナが、ガタガタ震えながらお茶を運んでいる 。

ルミナ「あ、熱っ! またこぼした……! 」
涼子「ルミナ! お茶は心で淹れるんです! 」

(演出) 家族のような喧騒の中、事務所の黒電話が鳴り響く 。 ひかりが受話器を取り、ガッツポーズをする 。

ひかり「みんな、仕事よ! SSランク案件、『北極の氷の下から古代神殿が浮上した』って! 」
カイ「(ガントレットを装着し、ニカッと笑う)しゃあねえな! 行くぞ、野郎ども! 泥だらけの冒険(にちじょう)へ!! 」

(カメラは新宿の雑踏へ走り出す一行を追い、空に広がる青い蒼穹を映してフェードアウト)

(M) 主題歌:泥だらけの讃歌

【完】