第8話:燃えるゴミはどっちだ? 冥王(プルート)の覚醒
【登場人物】
カイ:所長。ウリエルにより語られた「欠陥品」としての過去に苦悩しつつ、真の力に目覚める。
エル:カイを「お父様」と呼び、絶望する彼を救おうとする「マークⅡ」の少女。
ひかり:事務員。極限状態の中でもカイへの信頼を捨てない。
高清水涼子:元天使。天界の非情なシステムに改めて怒りを燃やす。
北條孝子:魔女。自らの魔術を上回るウリエルの「概念の炎」に驚愕する。
詫間亨:エンジニア。物理法則を無視した戦いに戦慄しながらも分析を続ける。
ウリエル:天界「力天使(パワー)」級の執行官。かつてカイを地獄へ捨てた張本人 。
〇 シベリア・灼熱の氷原(深夜)
(演出) マイナス40度の極寒だった世界が、ウリエルの放つ熱気でプラス20度まで急上昇している 。 溶けた永久凍土が泥濘(ぬかるみ)となり、白い蒸気が視界を遮る。
ウリエル『……久しぶりだな、廃棄物「ゼロ」。地獄の底で朽ち果てたと思っていたが、ヨモヤ、仲間を連れてノコノコ帰ってくるとはな 』
カイ「……(右手のガントレットを握りしめ)思い出したぜ。俺をゴミと呼んで、地獄へ突き落としたのはてめえのツラだったな 」
涼子「ウリエル……! 『神の炎』の異名を持つ、天界最強の武闘派ですわ! ガブリエルやラファエルとは殺傷能力の桁が違いますえ! 」
孝子「(放った炎がウリエルの聖炎にかき消されるのを見て)……わたくしの紅蓮が消されるなんて。あれは物理現象ではなく『概念』を焼く炎ですわね 」
〇 戦闘開始
ウリエルが燃え盛る大剣を振るう。 (効果音) ズォォォッ!! という重低音と共に、大気を歪ませる熱波が放たれる 。
ウリエル『我ガ炎ハ「概念」ヲ焼ク。不浄、罪悪、ソシテ不要ナデータ。全テヲ「無」ニ還ス、神ノ浄化システムナリ 』
カイ「(ガントレットを交差させて受け止めるが、皮膚が焦げる匂いがする)へっ……デカいゴミ焼却炉ってことだろ? 俺を捨てた時みたいにな! 」
ウリエルが踏み込み、カイの腹部へ凄まじい蹴りを放つ。 (効果音) ドォン!! とカイが吹き飛ばされ、溶けかかった岩盤に激突する 。
カイ「ぐはっ……! 」
ウリエル『「虚無」ハ、世界ノバグヲ消去スルタメノ機能。ダガ貴様ハ、消去対象デアル「感情」ヤ「記憶」ニ共感シ、削除ヲ躊躇(ためら)ッタ 』 ウリエル、倒れたカイを見下ろし、炎の剣を振り上げる。
ウリエル『掃除機ガ、ゴミニ情ヲ移シテ吸イ込マナケレバ、ソレハタダノ粗大ゴミダ。故ニ、貴様ハ廃棄サレタ。誰ニモ愛サレズ、何ノ役ニモ立タズ、地獄ノ底デ朽チルタメニ 』
〇 絶望の淵
(演出) カイの視界が霞む。 千年前、地獄へ突き落とされた時の冷たさと、「お前はゴミだ」という言葉が魂の空洞をえぐる 。 (カイのモノローグ)「……ああ、そうだ。俺は壊れているから捨てられた。役立たずだから、ここにいる。……俺は、いらないのか? 」
〇 エルの叫び
灼熱の熱風を切り裂き、ボロボロに焦げたパーカーを纏ったエルがカイの前に立ちはだかる 。 小さな両手を広げ、ウリエルを睨みつける。
ウリエル『退ケ、スペア(予備機)。貴様ハ回収対象ダ 』
エル「(震える声で)……カイを、いじめるな。カイは、ゴミじゃない 」 エルのオッドアイの左目、黒い瞳が激しく明滅する 。
エル「私が廃棄されるとき、カイのデータがずっと私を守ろうとしてた。『消すな』って、『生きろ』って。カイの手は、暖かい。……ゴミ箱なんかじゃない! 」
ウリエル『不愉快ダ。不具合品同士、仲良ク灰ニナレ! 「聖炎・断罪(プロミネンス・ジャッジ)」!! 』 太陽のような高熱球がエルのバリアを飲み込もうとする。
〇 冥王(プルート)の目覚め
カイの脳裏に、かつて自分を作った女性研究者(マザー)の声が蘇る 。 『名前は、カイ。……「海」のように、全てを受け止めるために生まれてほしかったの 』
(カイのモノローグ)「……そうだ。俺の力は『無』にするためだけのものじゃない。深く、暗く、でも何でも包み込む。あの海のように 」
カイが動き出す。エルの前に漆黒の「渦」が出現する。 (効果音) ジュワッ……。ウリエルの聖炎がその渦に触れた瞬間、音もなく吸い込まれていく 。
ウリエル『ナッ……!? 我ガ炎ガ、飲マレタ!? 』 黒い渦の中から、澄み切った蒼黒色の瞳を持つカイがゆっくりと立ち上がる 。
カイ「……ありがとよ、エル。お前のおかげで、目が覚めたぜ 」 カイが右手をかざす。以前の粗暴さは消え、王の威厳が漂う 。
カイ「俺はゴミ箱でも、掃除機でもねえ。俺は『海』だ。清濁併せ呑んで、全部受け止める『器』だ 」
〇 決着
ウリエルが全翼を炎と化し、極大の火球「聖炎・超新星(スーパーノーヴァ)」を放つ 。 カイ「来いよ。全部、食ってやる。『冥王・虚空捕食(プルート・ヴォイド・イーター)』!! 」 (演出) カイの掌が巨大なブラックホールのような口となり、太陽の熱量を飴細工のように引き伸ばして飲み込む 。 数秒後、荒れ狂っていた炎は完全に消滅する 。
ウリエル『馬鹿ナ……! エネルギーノ「変換」ダト!? 』
カイ「お返しだ。利子つけて返すのが探偵の流儀なんでな! 『冥王・倍返し(ペイバック・キャノン)』!! 」 (効果音) ズガァァァァァァン!! と、吸収した聖炎と虚無の混成ビームがゼロ距離で炸裂 。 ウリエルの真紅の鎧が粉砕され、彼は空の彼方へと弾き飛ばされる 。
光の柱が立ち昇り、シベリアの嵐が完全に消失。空には満天の星とオーロラが現れる 。
〇 オーロラ・ゲート
涼子「カイさん……なんだか『漢』の色気が増しましたわね 」
エル「(カイに抱きつき)……カイ、すごい。海だった 」
カイ「……お前が教えてくれたんだろ 」
突如、オーロラの中心部から巨大な光の階段が降りてくる 。
孝子「お迎えが来たみたいですわね。行きましょう。この上には、もっと不快で清潔な世界が待っていますわ 」
カイ「行くぞ! 『ゴミ』どもの殴り込みだ! 」
一行は光の階段へ足を踏み入れ、天の頂、女王ルミナの待つ場所へと向かう 。
(第8話 完)