第9話:純白の監獄学校、エルちゃん転校する
【登場人物】
カイ:所長。用務員に変装し、エルの初登校(潜入)を影から見守る。
ひかり:特別査察官に変装。冷静に学園の異常性を分析する。
エル:転校生として潜入。「1+1=2」という当たり前の真実で洗脳を揺るがす。
高清水涼子:PTA会長を自称。天界の教育方針に「美しくない」と激怒する。
北條孝子:保健医(理事)に変装。貴族的な余裕で管理者を追い詰める。
詫間亨:放送室ジャックを担当するエンジニア。
ソラ:給食の「唐揚げテロ」を仕掛ける名料理人。
ミカ:第1階層で出会ったレジスタンスの少年。一行の案内役。
サンダルフォン:第2階層「育成学校」の校長。歌による洗脳を司る。
〇天界・第一防衛線「嘆きの壁(ウォール・オブ・ラメント)」
(映像) 光の渦を抜け、一行が降り立ったのは一面が白く風化した骨のような物質で覆われた荒野だった 。 目の前には天まで届く巨大な城壁「嘆きの壁」がそびえ立つ 。
ひかり「第7階層にある王宮へ行くには、この七つの壁を越えなきゃならないみたい 」 カイ「いきなりボス戦とはいかねえか。……まるで出来の悪いRPGだな 」
突如、城壁がスライドし、身長10メートルを超える大理石の自動人形「ドミニオン・ガード」の軍団が現れる 。
カイ「『冥王・攻城槌(プルート・バタリングラム)』!! 」 (演出) カイの拳がゴーレムを内部から粉砕するが、数が多すぎてキリがない 。 その時、エルが壁に手を触れる 。エルの左目が黒く輝き、分厚い合金の壁がカーテンを開くように左右へ溶け、人が通れる「穴」が開く 。
〇第1階層「純白の商業区」
壁の向こうは、漂白されたような白一色の美しい街並みだった 。 しかし、行き交う天使たちは笑顔のまま微動だにせず、機械的な動作を繰り返している 。
カイ「生きてねえな。まるでプログラム通りに動く背景(モブ)キャラだ 」
放送『害獣(バグ)を検知。排除すれば「幸福ポイント」を加算します 』
放送が流れた瞬間、数万人の市民天使たちの目が赤く発光し、刃物を手に襲いかかる 。 一行は路地裏へ逃げ込み、そこで折れた翼を持つレジスタンスの少年・ミカと出会う 。
ミカ「上に行くには正規ルート……第2階層の『天使育成学校』を通らなきゃならない。そこの校長がゲートキーを持ってるんだ 」
〇第2階層「王立ルミナ学園」校門前
一行は変装して潜入を開始する。エルは純白の制服、カイは緑の用務員服、涼子は「PTA会長」の腕章をつけている 。
カイ「(デレデレしながら連写)エル、似合うぞ! 宇宙一だ! 」
ひかり「カイ、目的を忘れないで。……エルちゃん、できる? 」
エル「……うん。学校、行ってみたい。給食、ある? 」
〇3年A組の教室
真っ白な教室。30人の生徒が無表情に座り、鉛筆の走る音だけが響く 。 モニター顔の教師が黒板に数式を書く 。
教師『1+1=?』
生徒「はい! 答えは『ルミナ様』です! 」
教師『正解。……では、「あなた-ルミナ様」は? 』
生徒「答えは『無価値(ゼロ)』です! 」
エルがガタンと席を立つ 。教室中に緊張が走る。
エル「……違う。1たす1は、2。……それに、私からルミナを引いても、私は残る。カイも、ひかりも、みんな残る。誰も、ゼロじゃない 」
教師『異端思想(エラー)検知。補習(再教育)室行きです 』
教師の手が電流ムチに変形するが、そこへ用務員姿のカイがモップを構えて乱入する 。
カイ「掃除の時間だぜぇぇぇッ!! 暴力教師引く生徒の笑顔は、俺の拳って計算になるんだよ! 『冥王・モップ旋風(プルート・クリーニング)』!! 」
〇学園・放送室〜校庭(給食の時間)
涼子が校内放送をジャックする 。
涼子『生徒諸君! 今日の給食は特別メニューに変更ですわ! これが「文化」の味ですえ! 』
ドローンから投下されたのは、ソラ特製の「唐揚げ弁当」と「和三盆プリン」 。 醤油とニンニクの匂いが教室中に広がり、洗脳されていた子供たちの目に「食欲」という生きた光が戻る 。
生徒「おいしい……! なんだこれ、おいしいよぉ! 」
エル「(口を油だらけにして)……これ、甘い。幸せの味 」
〇校長室
巨大な脳髄を持つ異形の天使・サンダルフォンが椅子から立ち上がる 。 扉を蹴り破り、涼子と孝子が踏み込む 。
涼子「PTA会長の高清水涼子です! お宅の教育方針、不合格ですわ! 」
サンダルフォン『静粛に。私の校歌(アンセム)を聞きなさい 』
背中のパイプオルガンから精神を揺さぶる「洗脳の歌」が放たれる 。 涼子たちが苦しむ中、天井を突き破ってカイとエルが落下してくる 。
カイ「教育ってのはな、型に嵌めることじゃねえ。型を破る手伝いをしてやることだ! 『冥王・退学処分(プルート・エクスペル)』!! 」
カイの虚無が音波を吸収し、サンダルフォンの核を打ち抜く 。サンダルフォンは校長室の窓から吹き飛び、キラリと空に消えた 。
〇学園・校庭(夕方)
校門前。全校生徒がカイたちを見送るために集まっている 。 子供たちの手にはおにぎりやパンが握られ、その顔には本当の笑顔がある 。
生徒「エルちゃん、ありがとう! 転校しないで! 」
エル「(照れくさそうに手を振る)……バイバイ。給食、ちゃんと食べるんだよ 」
カイ「いい学園生活だったな、エル 」
一行はサンダルフォンから奪ったカードキーを使い、次なる階層、不気味な静寂が支配する「医療棟」へと向かう 。
(第9話 完)