最終話 脚本「陽だまりの誓いを君と」
【登場人物】 カイ(19歳・新たな理の守護者) ソラ(19歳・元奪衣婆の魂を持つ少女) ひかり(19歳・カイを愛する人間の少女) クロ(元死神シジマ・豆柴の守護犬) マドウ(死神の衣を纏った執行者) スサノオ(鬼塚学長・反逆の神) 月読命(高天原の使者) 閻魔大王(冥府の統治者) ナレーション
○帝都学院大学・図書館(夜) (激しい閃光の後、静寂が戻った館内。カイは膝をつき、自分の両手を見つめている。彼には「一度敗北した未来」の記憶が鮮明に焼き付いている 。窓の外では、スサノオの狂気に操られた学生たちがバリケードを叩く音が響いている 。)
ひかり 「カイくん……?。急にどうしたの?。顔色が真っ青よ。」
(心配そうに覗き込むひかり。その無傷な姿を見て、カイの瞳に涙が滲む 。)
カイ 「……ひかり、ソラ、聞いてくれ。これから何が起きるか、僕にはすべて分かっている。……今度こそ、誰も死なせない 。」
(カイの強い意志に、三人と一匹が顔を見合わせ、力強く頷く 。)
ひかり 「……わかったわ。敗北の原因なら、私が分析して対策を立てる。……二度目があるなら、それは私たちの『武器』よ 。」
(ひかりがキーボードを叩く音が、反撃の狼煙のように静かな館内に響く 。)
○図書館・エントランス(深夜) (バリケードを破り、狂気に目を血走らせた学生たちがなだれ込んでくる 。)
ソラ 「ごめんね……。でも、もうあんたたちをスサノオの駒にはさせない!。」
(ソラの全霊を込めた念動力が、学生たちを傷つけることなく、床や書架で物理的に隔離し、その動きを完全に封じ込める 。)
(天井の闇から、漆黒の執行者・マドウが音もなく舞い降りる 。)
マドウ 「ククク……。少しは学習したようだが、この『天逆鉾』の前ではすべては無意味だ。……死ね、カイ!。」
(マドウが矛を構え、カイの虚無を吸収して跳ね返そうとする 。)
カイ 「……いいえ。僕はもう『無』の力は使わない。……言霊、発動。……お前が拠り所とするスサノオへの忠誠は、偽りだ 。」
(カイの声が音ではなく、物理的な理としてマドウの魂を貫く 。)
マドウ 「な、何だ……!?。私の魂が……震えている……!?。」
(カイの言霊によって存在意義を揺さぶられたマドウ。その一瞬の隙を突き、影の狼へと変身したクロがマドウの足元を崩す 。)
カイ 「お前の戦いは終わった。お前はもう死神ではない。……ただの、迷子だ 。」
(カイの最後の一言が楔となり、マドウの魂は自らの力の暴走に飲み込まれ、光の渦となって消滅した 。)
○大学・グラウンド(夜明け前) (ついに黒幕、スサノオが鬼塚学長の姿で現れる 。)
スサノオ 「見事だ、人の子らよ。だが、神の理そのものを捻じ曲げる私の力、耐えられるかな?。」
(スサノオが手をかざすと、大学全体が崩壊し始めるほどの破滅的な神気が放たれる 。)
カイ 「……スサノオ。お前がもたらした『争い』という理そのものを、この世界から『無かったこと』にする 。」
(カイの内に宿る「空虚」と「言霊」が融合し、新たな創造の力が爆発する 。)
(眩い光と深い闇が螺旋を描き、スサノオの破滅を包み込む 。その瞬間、大学を覆っていた結界も、狂気も、傷ついた校舎も、すべてがビデオの巻き戻しのように修復されていった 。)
○大学・屋上(夕暮れ・二年の月日が流れる) (何事もなかったかのように平和な時間が流れるキャンパス 。大人の階段を上り、二十歳の誕生日を迎えたカイとソラ 。)
ひかり 「二人とも、成人おめでとう!。はい、これ、私からのプレゼントよ。」
(笑顔のひかりから手渡される贈りもの。だが、その平和を破るように、二つの光の門が屋上に現れる 。)
月読命 「カイ。そなたの魂は神の領域に達した。……天上界へ赴き、神として永遠の秩序を守るか。それとも人間として、限られた生を歩むか。……選べ 。」
閻魔大王 「ソト、そしてシジマよ。そなたたちも冥府に戻る義務がある。……元の役職に戻るか、あるいは魂の契約を捨てて人間として死を待つか。……どちらだ 。」
(重い沈黙。ひかりが、カイの腕を強く掴んで震えている 。)
ひかり 「……行かないで。……神様になんてならなくていい。……ただ一緒に、笑って、喧嘩して、普通に歳をとりたいの……! 。」
(ひかりの魂の叫びに、三人は互いの顔を見合わせる。迷いはない 。)
クロ 「ワン!(私はもう死神には戻りません。この子たちの家族として生きたいのです) 。」
ソラ 「私もここに残るわ。私はもう、魂を裁く奪衣婆じゃない。……ただのソラとして、みんなといたい! 。」
カイ 「僕も、人間として生きることを選びます。……神として永遠を生きるより、限りある時間を、愛する人たちの隣で守り抜きたい 。」
(閻魔大王は満足げに微笑み、契約の鎖を光に変えて消した 。)
○エピローグ・陽だまり探偵事務所(数年後) (都会の片隅、古い雑居ビル。手書きの看板には『陽だまり探偵事務所』の文字 。)
(デスクで情報を解析するひかり、現場へ飛び出そうとするソラ、そして所長として依頼者と向き合うカイ 。)
ひかり 「カイくん、次の依頼よ。……失踪したペットの捜索だけど。」
カイ 「(穏やかに微笑み)了解。……どんな小さな悩みでも、僕たちが解決しなきゃね 。」
(窓辺で昼寝をしていたクロが、不意に目を覚まし、事務所の北側の壁を見つめて低く唸る 。)
カイ 「……どうした、クロ?。」
(壁の向こうに、未知なる次元の裂け目と、そこからこちらを覗き込む飢えた「何か」の気配 。)
ナレーション 「物語は一度幕を閉じた。だが、彼らが手に入れた平穏は、新たな戦いの序章に過ぎない。……僕たちの朝日は、いつだって、この陽だまりの中から昇るのだから 。」
(朝日に照らされる四人のシルエット。カメラが空高く引いていき、宇宙の深淵に蠢くノイズを映して暗転。)
○スタッフロール (主題歌「Re-vive」のフルバージョンが流れる。これまでの思い出のカットがセピア色から鮮やかな色に変わっていく演出。)