第2話 脚本「地上の影、死神の囁き」
【登場人物】
カイ(7歳・前世の記憶を持つ少年)・ソラ(7歳・監視役の転生体である少女)・ひかり(7歳・二人の幼なじみ)・父(平凡なサラリーマン)・母(元看護師のパート主婦)・死神ヤミ(死神たちの統括官)・死神A・B・C

○アパート・子供部屋(朝) (朝日が差し込む、少し古びた2LDKのアパート。二段ベッドの上段で、カイがうなされている。下段ではソラが大の字になって眠っている。)

カイ 「(うわ言)……熱い……いつまで……耐えればいいんだ……。」

(カイの脳裏にフラッシュバックする、燃え盛る業火のイメージ。)

ソラ 「(下からベッドを蹴り上げ)……うるさーい!カイ、寝相悪いよ!」

(カイがガバッと飛び起きる。額には脂汗が滲んでいる。彼は自分の小さな手を見つめる。)

カイ 「(モノローグ)夢か……。地上でカイとして生まれてから7年。それでも、あの千年の地獄の熱さは魂にこびりついている。」

○アパート・ダイニング (母が朝食の目玉焼きを皿に並べている。父はスーツ姿でコーヒーを飲んでいる。)

母 「カイ、ソラ、早くしなさい!学校に遅れるわよ。」

ソラ 「はーい!今日の朝ごはん、ウインナー多めにして!」

(ソラは階段を駆け下りるように食卓につく。その姿は、かつての無表情なソトからは想像もつかないほど快活だ。)

父 「カイ、また顔色が悪いな。しっかり食べないと、週末のキャッチボールでバテるぞ。」

カイ 「……うん、大丈夫。いただきます。」

(カイは淡々と食事を口に運ぶ。その所作は子供らしくないほど落ち着いている。)

母 「もう、あんたたちは正反対ね。ソラは活発すぎて近所から叱られるし、カイは静かすぎて心配になるわ。」

○通学路 (ランドセルを背負った二人が歩いている。角から、幼なじみの相沢ひかりが駆けてくる。)

ひかり 「おはよー!カイくん、ソラちゃん!」

ソラ 「ひかり!おはよー!ねえ、今日の放課後は神社の裏山で『秘密の探検』の続き、やろうよ!」

ひかり 「えー、また泥だらけになるの?お母さんに怒られちゃうよ。」

(ひかりは少し気弱だが、二人の間を取り持つバランサーのような存在だ。)

カイ 「…………。」

(カイがふと立ち止まり、青く澄み渡った空を見上げる。だが、彼の瞳に映る空の一部が、墨を垂らしたように不自然に濁って見える。)

ひかり 「カイくん?どうしたの?」

カイ 「……いや、なんでもない。なんだか、嫌な感じがしただけだ。」

○公園・午後 (放課後の穏やかな光景。ひかりはベンチで図鑑を読んでいる。カイはブランコに乗り、ソラがその後ろで背中を押している。)

ソラ 「いくよー!せーのっ!」

(ソラが力強く押すたびに、ブランコが大きく揺れる。カイは風を感じながら、地上で得たこの『感覚』を確かめるように目を閉じる。だが……。)

カイ 「(モノローグ)風が……止まった?。」

(突然、公園全体の音がかき消され、時間が凍りついたような感覚に陥る。カイは目を見開く。)

カイ 「ソラ、危ない!そこから離れて!。」

ソラ 「えっ?何?」

(キイイッ、という金属が悲鳴を上げるような軋み音。カイの乗っているブランコの鎖が、目に見えない鋭利な刃物で断ち切られたように、左右同時に千切れる。)

カイ 「うわあっ!。」

(投げ出されるカイの小さな体。地面の硬いコンクリートへ叩きつけられる、と思った瞬間――。)

ソラ 「カイ!。」

(ソラが信じられないほどの瞬発力で踏み込み、空中でカイの腕を掴む。そのまま力任せに引き寄せ、二人はもつれ合うようにして砂場へ倒れ込む。)

ひかり 「カイくん!ソラちゃん!。」

(駆け寄るひかり。砂埃が舞う中、カイとソラは無傷で起き上がる。カイの視線は、公園の木々の隙間に一瞬だけ揺らめいた、漆黒の衣の残像を捉えていた。)

カイ 「(小声で)……やっぱり、事故じゃない。」

ソラ 「……今、何か黒い影が見えた気がする……。」

○冥府・暗黒の広間 (巨大な影のような存在、死神統括官ヤミが報告を受けている。)

死神A 「最初の接触は失敗に終わりました。あの奪衣婆の魂を宿す娘、肉体の限界を超えた反応を見せました。」

ヤミ 「ふむ。子供の器でありながら、魂の本質が目覚めかけているというわけか。だが、子供の体は脆い。一度の失敗など、些細な誤差に過ぎん。」

死神B 「ヤミ様、次はより確実に。ターゲット一家は来週末、峠道を通って旅行に行く予定です。ガードレールの心許ない古い道です。」

ヤミ 「いいだろう。自然な事故に見せかけるのは我々の得意とするところだ。物理的な衝撃と精神的な干渉を組み合わせ、あの男の魂ごと地獄へ連れ戻せ。今度は三体同時に仕掛けろ。」

(ヤミの唇が酷薄な形に歪む。)

ヤミ 「希望が大きければ大きいほど、それが絶望に変わった時の味わいは格別だ。神々の遊戯はまだ始まったばかりだぞ。」

○公園・夕暮れ (赤く染まった公園で、カイ、ソラ、ひかりが立ち尽くしている。千切れたブランコの鎖が、地面に虚しく転がっている。)

ひかり 「怖いよ……。ブランコの鎖がこんな風に切れるなんて、普通じゃないよ。」

ソラ 「大丈夫だよ、ひかり。何があっても、私がカイもひかりも守ってみせるから!」

(ソラが自分の掌をじっと見つめる。先ほどカイを助けた時に感じた、体の内側から溢れ出す奇妙な熱い力を思い出している。)

カイ 「ソラ……僕たちは狙われている。普通の子供としては、もう生きていけないのかもしれない。」

(カイの瞳には、かつての地獄の王としての深い静寂が宿る。)

カイ 「僕たち、戦わなくちゃいけないんだ。」

ソラ 「うん、受けて立ってあげる。二人なら、絶対に負けない!」

(二人の子供が、夕闇の中で小さな手を固く握り合う。その背後の空には、巨大な死神の鎌の幻影が重なり、不気味に笑っていた。)

○スタッフロール (エンディング曲「陽だまりのパズル」が流れ始める。)

(第3話予告) カイ 「家族で過ごす楽しい時間。でも、空気は急速に冷たくなっていく。」

ソラ 「お父さん、目を開けて!ブレーキを踏んで!」

カイ 「死神が笑っている。死が、すぐそこまで迫っているんだ。」

ナレーション 「次回、ネザーワールド・リヴァイヴ。第3話『家族の絆、決死のブレーキ』。愛する日常を守るため、少女の力が覚醒する。」