ミッションとリーダーシップ

 マネジメントはミッションに対して成果をあげることであり、社会福祉法人における成果とは、人の成長であり社会貢献である。これは、概要でありすべてではない。社会福祉法人毎にミッションの内容、質、構成、時間軸が異なり、描くべきビジョンに差異が生じるからである。しかし、人の成長と社会貢献は、誰もが認める不動の存在感を示している。 ミッションは、時間を要するものでなければならない。短期間で成果が上がるものが、駄目というわけではない。ニーズによっては、その様な使命が求められるときもある。しかし、基本は、或いは、事業のスタート時には、長期の目標を目指すべきである。
 日本人は、のこぎりを使う場合、引いて切るが、米国では押して切る。結果は同じであるが、プロセスは違う。目標に向かう場合も、現在を起点に目標までのロードマップを構築する場合と、目標を起点とし、現在何を成すべきかを考える場合、プロセスにおける起点が異なる。結果は同じである。われわれは、どちらを選択すべきか。現在を起点とした場合、途中で脱落し目標に到達できなくても脱落した理由が言い訳となる。しかし、目標を起点とした場合、目標は達成しなければいけないのである。達成するためのプロセスを構築するしか選択肢はないのである。重要なことは、行動を起こすと言うことである。
 目標を起点とすることは、成果中心でなければならない。事業活動に応じた成果をあげたかどうか、人材や資源の配分が適切であったかどうかを考えなければならない。従って、成果中心と言えども、結果重視主義ではなく、そこに至るプロセスも重要である。もちろん、ニーズを満足させることは、重要な要素の一つであるが、そのことに固執してはいけない、結果に至るプログラムやプロジェクトがどの様に成果に結びついていったのか、常に検証する作業が必要である。
 結果に至るプロセスは千差万別の組み合わせがあり無数に選択肢が存在し、その選択肢の中から、適切なものをチョイスしリードしていく存在が必要である。そこにリーダーが必要であり、リーダーシップが求められる。
 リーダーシップとは、単に指導者としての能力・資質で判断してはいけない。それは、持ち合わせていることが最低条件であるからである。リーダーシップとは、行動力である。「検討している。」「様子を見よう。」と思索に留まっていては、事業は澱むだけである。行動とは、時にはミッションを見直し、別視点から捉えなおしたり、新しい視点を取り入れたりなど、組織に活力を与えることに繋がるのである。成果の見込めないミッションは、廃棄する決断も必要である。リーダーは、常に優先順位を模索している。目標を起点とし、今、成すべき事の優先順位を判断する。
 リーダーシップとは、模範的存在との意味も成す。ミッションに対する自分の考えを押しつけるのではなく共有する姿勢が必要である。また、自らの組織における立ち位置を認識し、自分は何を成すべきかを考えなければならない。リーダーシップと言う観点では、組織は何をすべきではなく自らは何をすべきかを考えなければならない。それは、行動の責任をとるのは、リーダーシップを発揮したその人だからである。
 非営利組織である社会福祉法人での究極のリーダー観は、そこに所属する全員がリーダーであると言うことである。全員が責任を持ち、全員が行動する。全員が、自らは何を成すべきかを考える。全員がビジョンを高め、能力を高め、組織の成果を高めるために貢献するのである。この考え方は、簡単ではない、どちらかと言えば困難である。しかし、目指すべきリーダー観である。