リーダーの資質と成長
ミッション(使命)、ビジョン(構想)、目標のロードマップを成果に結びつけるには、リーダーが必要である。烏合の衆では意思疎通を図ることに時間を要し、ましてや使命を共有するに至るには、膨大な手続きと時間を要することであろう。バランスの良い軸を有している独楽は、少しくらいバランスを崩しても元に戻る修復力を発揮する。リーダーが確固たる信念と成果に対する達成願望、自分という個ではなくチームとして使命を共有したいとの包容力、何よりも自分がリーダーであると認識し、自分は何をなすべきかと問い続けているなど、軸にぶれがないことが大切である。
リーダーは、自らが成長することを望まなければならない。リーダー自身の成長がなければチームの成長も滞り、組織の成長も停滞してしまう。もちろん、チームの成長によってリーダーが成長していくこともあるが、リーダーはチームの模範となるべき存在であり、基本はリーダーの成長が先行すべきであろう。
ここで語る成長とは、身体的な成熟ではなく、精神的な成熟であり、事業の完成度や規模拡大を意味している。成長の過程は、竹のように真上に伸びる、あるいは右肩上がりと表現されるようなグラフ的、共通していることは、直線で表現されていることであるが、蔦のように状況に合わせて伸びていく、凹凸はあるが上昇傾向にあるグラフ、共通していることは、変化はあるが伸びていることである。成長の過程に定型はないのである。蔦のように適宜調整しながら伸びていくことが理想型と言えるかも知れない。とにかく、成長が止まらないよう臨機応変、調整していくことが重要であり、途中で一時停滞したとしても、ミッションやビジョンが確固たる事柄であれば、確実に再開するであろう。仮に停滞状況に打開策が見つからない場合は、成長を妨げている事象に改善を施すなり、廃棄するなりの対応を試みれば良いのである。
成長とは、勢いである。リーダーやチームが成長すれば、組織としての勢いが増すことになる。蔦の成長のような柔軟性、伸びていくと言う活力、方向性を示すビジョンが示されていれば、必ず成果へと向かっていくことになる。反面、それらが一つでも欠ければ組織は硬直化していくことになり、その状況から脱するためには莫大なエネルギーを要することになる。
成長の牽引役がリーダーと言っても過言ではないだろう。そのリーダーは、組織において唯一無二の存在ではない。もちろん、小さな組織であれば、それもあり得るとは考えられるが、社会福祉法人規模の組織であれば、小さな組織と言う表現には当てはまらない。
社会福祉法人のリーダーは、理事長である。最高経営会議である理事会を取り仕切る役割を有し、理事長決裁の権限を有している。社会福祉法人としてののミッション(使命)を明確に示し、事業所責任者権限を委譲している施設長に示していく。最も大切なことは、法人理念をすべての事業の出発点に備えつけることであり、その理念は、永久に変わることのない不滅の精神であることが求められる。それが根っことなり事業という芽を出して成長していくことは言うまでもない。
社会福祉法人のトップリーダーである理事長は、法人経営責任者としてマネジメントに取り組むべきである。理事会に出席し司会を務めるだけの役目であれば、組織としての成長は見込めない。しかし、社会福祉法人の理事の場合、ボランティアと同じように無報酬の場合が多い、ただし、施設長を常任理事とする場合もある。理事長が常任でない場合は、本業が生業(なりわい)となっており、マネジメントについて考える時間に限界がある。しかし、その役目を担った時点で、自分なりの使命感を持ち、組織に尽くす覚悟を持ったであろう事は容易に推測できる。その意志を率先して表現し、組織の先頭に立たなければならない。そのためには、理事会の掌握は勿論のこと、事業所の現状を常に把握しておくことが重要である。施設長とのコミットメントの機会を持ち、時には事業所に足を運ぶことも必要である。行事に参加したり、職員会議に陪席したり、辞令書を職員に直接授与したりなど、機会は、探さなくても、そこにあるのである。それらの機会を通じ、施設長の次席の位置に存在するリーダー職員の人物評価をしておくことも重要な仕事である。それは、次の施設長人事を決める際、公正に判断するための材料になるからである。
理事長は、社会の動きに敏感でなければならない。社会のニーズ、人材の質、資金力、組織としての能力は、常に変化している。状況に応じて適宜調整していく柔軟性、変化に対応できず硬直化している事業の見極めを判断していくのである。陥るべきでないのは、待ちの態勢である。待つと言うことは後手の姿勢であり、それは、職員からは失望の念を得ても信頼を得ることは出来ない。変化は脅威ではないのである。チャンスである。イノベーション(革新)への布石となるのである。つまり、社会の動きに敏感であれば、イノベーションの機会を予測し準備することができる。より確実性を増すために体系化しておく。そのための態勢作りに着手するためにも、リーダーとしての信頼感を得ておくことが重要なのである。
法人としてのリーダーが理事長であれば事業所としてのリーダーは施設長となる。その直下に働く職員が存在している。