卓越性の追求
組織を導いていくのは、ミッションでありビジョンであり目標である。しかし、成果をもたらすのは人である。成果の先にあるものは、社会貢献であり、人を変えることである。人の集合体が組織である。組織は、人を生かさなければならない。始まりも終わりもすべて人が関わり、人が影響を与え、人が影響を与えられるのである。福祉サービスにも技術革新は進んでおり、機械化やロボットの活用が進んでいるが、ロボットでは、システムの利便性は向上するが、組織は形成できない。
組織は、何に対して必要なのかを問わなければならない。利益を得るため、便利さの追求、雇用を維持していくため、屋号を残すため。これらは欲求であり、欲求は個々人で千差万別であり統一性に欠ける。組織にとって必要な存在は、人である。組織に対して、その社会貢献に対して期待している存在も人である。
組織は、人から必要とされ、その働きは、人に対して有効でなければならない。そのために、どのような人で組織は、構成されるべきかを問わなければならない。
組織は、人の成長に貢献するべきであり、働く職員に対しても、その成長を考えなければならない。しかし、基本は、職員個々人が、自ら成長したいとの意欲または意志を持たなければならない。自らが成長を望まなければ、組織が個々人の成長に対してアプローチしても効果がない。ただし、職員の「強み」を発見し示してあげることは組織にできる。それが、組織の役目である。人は、「弱み」を克服していくより「強み」を伸ばしていく方がエネルギー消費量は少なく効率が良い。組織が選択すべきは、後者である。
職員自身が、自らの成長のために着目すべきは、自分の「強み」である。卓越性の追求である。自分の中にある、他よりはるかに優れていることを発見することである。人は、自分の短所に着目してしまうと言う弱点をもっている。劣等感や喪失感、自己防衛、自傷行為等々、自分を見下してしまったり、自分を破壊しようとしたり、自分の存在を否定してしまったり、それらの症状を理性が制御しているが、ストッパーが外れたとき、自分を「不必要」な存在として認識してしまうのである。そこには、成長を促すための発展的な要素は一切見いだすことはできない。
人は、長所が生かされていることを実感することにより、充実感を味わい、自信へと繋がっていくのである。長所は、能力である。能力によって仕事の質、効率、影響力が変化していく。能力の程度によって組織への貢献度に差異は生じるが、重要なことは、能力がなくては、優れた仕事ができず、自信を持つこともできず、人としての成長にも繋がらない。
組織を構成している職員ひとり一人の成長なくして組織の成長は期待できない。非営利組織である社会福祉法人の職員たちは、組織とビジョンを共有するからこそ働いているのである。報酬は二次的な要素であり、第一義は、自らの成長である。
「組織は、或いは上司は自分の成長に対して助力してくれない」と考えるのは筋違いであり、そのことを明確に示さなければならない。成長するための自己啓発について責任を担うのは、組織でもなく上司でもなく、その人本人である。「組織と自らを成長させるために自分は何を成すべきか、何を担うべきか、何に集中すべきか」を問わなければならない。そして、その回答を自ら導き出さなければならない。
成長を導き出す最も有効な手段は、責任を持つことである。無責任は、組織や自らの成長に貢献しないばかりか、悪影響を及ぼす愚策である。組織が職員に責任を与えるとき、その人の能力を少し超えた程度が望ましい。能力が兼ね備えられた範囲での責任を果たすのは至極当然であるからである。そこには、能力の向上は望めない。手が届きそうで届かない状態に対して、人は、向上心をかき立てられる。もちろん、諦めて挫折することもあるが、それは、取るに足らないことである。与える責任を調整すれば良いだけのことである。人は、責任を与えられれば、その責任を果たしたい、そのためには、責任を果たせるレベルに自分を向上したいと考えなければならない。責任に対して真剣に取り組まなければならない。
組織を編成する中でリーダーを選出していくが、その際、肩書きを与える。そこに勘違いが生じる場合もある。肩書きを貰ったことに対しての責任感ではなく、名刺に印字できる名誉感が先行されてしまい。肩書きで呼ばれることに満足するだけで責任を果たせない場合である。肩書きを与えた場合、おおよそ3ヶ月間程度の試用期間を設けるのは、人事の修正を施すための対策である。
人は、自己開発することで成長するが、自己開発とは、単に仕事や生き方のスキルを高めていくことだけではなく、人間として大きくなっていくことが重要なのである。
自分が他の人より優れている部分、それは、どんな些細なことでも良いのである。自分の中の卓越性を導き出すこと、それは、己を知ること、自己覚知に結びついてくるが、重要な作業である。「自分の卓越性は、組織と自分に何をもたらすのか、それは有益であるか、無益であるか」を問い続けなければならない。