ボランティアと共に
われわれの組織には、数多くのボランティアが活躍している。非営利団体で働く人を二種類に大別すると、有償で働くスタッフと無償で働くスタッフになる。NPO(Nonprofit Organization)法人が、その職員構成を如実に表しており、無償で働くスタッフなくしては、法人活動は成り立たないのである。ボランティアも活動による社会貢献に対して、自分が何を成すべきかを常に問いかけ活動しているのである。
しかし、社会福祉法人においてはボランティアに対して、無償で働くスタッフとの考え方は少数派であり、現代においても「奉仕者」としての捉え方である。共に働くスタッフと言うより、ボランティアを受け入れると言う表現が適している。
ボランティアを東洋的に表現すると「自願奉仕」となる。自ら願って奉仕する。更に付け加えると、自分の能力を無償で提供すると言うことになる。
社会福祉施設がボランティアを受け入れる三大要因として挙げられるのが、
①利用者の対人関係拡大のため。
②社会福祉の啓発のため。
③社会福祉従事者の発掘と育成のため。
であり、更に、定期性を持って活動すること、趣味や特技、知識、技能などの能力を提供することが、利用者の利益に繋がるとの考えである。
日本における「ボランティア」は「奉仕の精神」と言う精神的な部分を重視していたが、阪神大震災以降は、「自分の能力を提供しよう」との方向へ移行してきた。阪神大震災時、若者たちが阪神地区に駆けつけ、自分のできることを探し、兎にも角にも体を動かしていた。そんな若者たちに対して、「奉仕」ではなく「自分の力を使おう」との純粋な想いが感じられたのである。
そして、NPO団体の活動が活発になり、人々が認識できるようになってきたのも、阪神淡路大震災以降が顕著であった。
NPO団体が、積極的に資金を集め、スタッフを集め、その資金とスタッフを最大限に活用している現状に対し、社会福祉法人は、人件費・運営費を補助金に頼り、経営資金に対しての危機感が薄れていった。有償のスタッフで最低限の事業運営が可能なため、無償スタッフへの業務負担の余地がない。また、利用者へのサービスの質を維持するため、有資格者の雇用を促進してきた。
しかし、昨今の福祉サービスへのニーズは、他種多様化しており、制度も進化をしているが、社会の動きになかなか追いつけない。そこで、即戦力として課題に向きあえるのが「ボランティア」である。次第に混沌化していく日本社会、それを正常化に向けていくのは、他ならぬ「ボランティア」の純粋な力なのである。
社会福祉法人がなかった時代は、無償のスタッフが事業を支え、資金集めを支えてきた、社会福祉法人の制度ができた当時も補助金だけでは運営が困難であり、寄附金集めに奔走していたのである。福祉を必要としている国民がいる。幸せを求めている国民がいる。そのような国民に手を差し伸べることが自分たちの使命である。この使命感を頑なに貫き通していたのである。
社会福祉法人において、有償スタッフだけの力では、限界がある。介護や介助の補助、理美容奉仕、作業補助、家庭教師など、ボランティアの活動は、多種多様に亘っているが、福祉施設の運営や経営には、関わっていない。「奉仕者」と言えば聞こえは良いが、「お手伝いさん」としての対応であり、活動後に次回の打ち合わせを兼ねてお茶を出す程度である。福祉施設運営の中でのボランティアの主体性、あるいは所属意識が育ちにくい土壌にある。
ボランティアこそ、明日の福祉を支える原動力である。ボランティアに主体性を持たせ、社会福祉法人の使命を共に共有し、自分の存在の証しの場として活躍してもらう。そして、人としての成長を果たしていくことが、更なる社会貢献へと繋がっていくのである。
社会福祉法人をマネジメントする場合、このボランティアの存在を軽視してはならない。重視しなければならない。ボランティアを無償のスタッフとして位置づけなければならない。人は、社会に貢献することによって、自己の存在を認知できるのである。認知することが自己覚知に繋がるのである。社会福祉法人の組織の中にボランティアを組み入れていくことが重要である。「そんなことは不可能だ」と言う台詞は通用しない。NPO団体は、それを成しているのである。社会福祉法人は、有償スタッフ・無償スタッフの社会貢献に対する自己表現の場でもある。組織の一員として、共に使命の成果を目指していく同志である。