理事会の成すべきこと

 非営利組織である社会福祉法人が成果をあげるためには、理事会のリーダーシップが欠かせない。理事会は、社会福祉法人における最高経営会議であり議決機関である。理事会が組織全体に対して、ミッションを考案させ、維持させ、遂行させなければならない。そのためには、理事会が、理事会が真摯にマネジメントに取り組まなければならない。そして、成果を評価しなければならない。危機管理も理事会に課せられた役目である。組織が危機的状況に陥った場合、理事は、率先して危機を脱する策を講じなければならない。
 非営利組織である社会福祉法人の理事会は、資金集めに対して中心的役割を果たさなければならない。資金集めを怠っている理事会に真摯さを感じ取ることはできない。働く職員に対して示しがつかない。資金集めとは、もちろん、その字の通り資金が集まることが目的ではあるが、それが第一義ではない、社会福祉法人の使命について共感してくれる個人や団体を開拓していくことが第一義である。そのためには、自分の組織が何を目指し何を成しているのかを把握しておかなければならない。
 理事とは、地位ではなく責任である。名刺に「○○法人理事」と記載し、配付するだけが理事の仕事ではない。名刺を渡し、社会福祉法人のミッションを理解して貰い協力を求めることが仕事である。また、理事会に対し、職員やボランティアに対し、さらには、ミッションに対し責任を負うことが課せられた任務である。
 理事長は、組織に所属するものたちの仕事が捗るように調整し、成果をあげやすく調整し、仕事に対して生き甲斐を感じ楽しめるように調整することを役割として責任を持たなければならない。理事会に出席し、事業所長の報告を受け、法人事務長からの書類押印依頼に応じるだけが理事長の役目ではない。トップリーダーは、みなの先頭に立ち牽引していかなければならない。みなの模範とならなければならない。言葉だけでなく態度を示さなければならない。何よりも、組織をマネジメントしなければならないのである。
 理事会役員は、理事及び監事によって構成される。それは、社会福祉法人審査基準第3「法人の組織運営」及び社会福祉法人定款準則、社会福祉法人審査要領により定められている。その中で理事の要件として「社会福祉事業について熱意と理解を有し、実際に法人運営の職責を果たし得る者であること。」との記載が明記されている。その理事の中から、理事長が選出される。
 理事会の開催回数については、特に定めはないが、予算・事業計画決議のための理事会、中間補正予算のための理事会、決算・事業報告のための理事会の計3回は、最低限必要であろう。
 理事会で議決を必要とする項目は、社会福祉法人指導監査要綱により定められている。
①予算、決算、基本財産の処分、事業計画及び事業報告
②予算外の新たな義務の負担又は権利の放棄
③定款の変更
④合併
⑤解散及び解散した場合の残余財産の帰属者の選定
⑥社会福祉事業に係る許認可、寄付金の募集その他所轄庁等の許認可を受ける事項
⑦定款細則、経理規程等社会福祉法人の運営に関する規則の制定及び変更
⑧施設長の任免その他重要な人事
⑨金銭の借り入れ、財産の取得・処分等に係る契約(軽微なものを除く)
⑩役員報酬に関する事項
⑪その他、この社会福祉法人の業務に関する重要事項
 なお、日常の業務として理事会が定めるものについては、理事長が専決し、これを理事会に報告すること。
 この理事長専決事項については、社会福祉法人定款準則第9条第1項の備考として例示されている。
(1)「日常の業務として理事会が定めるもの」の例としては、次のような業務がある。なお、これらは例示であって、法人運営に重大な影響があるものを除き、これら以外の業務であっても理事会において定めることは差し支えないこと。
①「施設長の任免その他重要な人事」を除く職員の任免
②職員の日常の労務管理・福利厚生に関すること
③債権の免除・効力の変更のうち、当該処分が法人に有利であると認められもの、その他やむを得ない特別の理由があると認められるもの
ただし、法人運営に重大な影響があるものを除く。
④設備資金の借り入れに係る契約であって予算の範囲内のもの
⑤建設工事請負や物品納入等の契約のうち次のような軽微なもの
ア 日常的に消費する給食材料、消耗品等の日々の購入
イ 施設設備の保守管理、物品の修理等
ウ 緊急を要する物品の購入等
⑥基本財産以外の固定資産の取得及び改良等のための支出並びにこれらの処分
ただし、法人運営に重大な影響があるものを除く。
⑦損傷その他の理由により不要となった物品又は修理を加えても使用に耐えないと認められる物品の売却又は廃棄
ただし、法人運営に重大な影響がある固定資産を除く。
⑧予算上の予備費の支出
⑨入所者・利用者の日常の処遇に関すること
⑩入所者預り金の日常管理に関すること
⑪寄付金の受け入れに関すること
 なお、これらの中には諸規程において定める契約担当者に委任されるものも含まれる。 また、理事会において、議事録を作成し永久保存することが義務付けられている。議事録に記載する最低限の事項は、次の通りである。
①開催年月日・開会時刻・閉会時刻
②開催場所
③出席者氏名 (理事総数)(人数のみの記載でなく氏名も明記)
④欠席者氏名 ( 〃 )
⑤議長の選出
⑥議長による定足数の確認
⑦議事録署名人の選出
⑧議案
⑨議案に関する発言要旨(発言者氏名を明記)
⑨議案に対する議決結果
⑩議事録が正確なものであることを証するため、議事録署名人が署名する旨の文言
⑪議事録署名人の自筆署名及び捺印(議事録署名人は、議長及び⑥で選出された2名以上の署名人とすること。また、常に同一の者が署名人になることは避けること)
⑫署名年月日
 理事会及び理事長が責任を果たすべき項目をいくつかピックアップしたが、これらは、社会福祉法人として適正に経営されていることを証明する手段でもある。法令遵守は当然であり、最低限のルールは、遵守しなければならない。