社会福祉法人について

 社会福祉法人は、社会福祉法により社会福祉事業を行うことを目的に設立しているが、社会福祉事業は、社会福祉法第2条で、第1種社会福祉事業と第2種社会福祉事業に分類されている。
 第一種社会福祉事業として以下の事業がある。
○生活保護法に規定する救護施設、更生施設その他生計困難者を無料又は低額な料金で入所させて生活の扶助を行うことを目的とする施設を経営する事業
・救護施設
・更生施設
・医療保護施設
・授産施設
・宿所提供施設
・生計困難者に対して助葬を行う事業
○児童福祉法に規定する以下の施設を経営する事業
・乳児院
・母子生活支援施設
・児童養護施設
・知的障害児施設
・知的障害児通園施設
・盲ろうあ児施設
・肢体不自由児施設
・重症心身障害児施設
・情緒障害児短期治療施設
・児童自立支援施設
○老人福祉法に規定する以下の施設を経営する事業
・養護老人ホーム
・特別養護老人ホーム
・軽費老人ホーム
○障害者自立支援法に規定する以下の施設を経営する事業
・障害者支援施設
○障害者自立支援法附則第四十一条第一項に規定する以下の施設を経営する事業
・身体障害者更生援護施設
○障害者自立支援法附則第五十八条第一項に規定する以下の施設を経営する事業
・知的障害者援護施設
・売春防止法に規定する婦人保護施設を経営する事業
・授産施設を経営する事業
・生計困難者に対して無利子又は低利で資金を融通する事業
 第二種社会福祉事業として以下の事業がある。
○生計困難者に対して、その住居で衣食その他日常の生活必需品若しくはこれに要する金銭を与え、又は生活に関する相談に応ずる事業
・生活必需品等を与える事業
・生活に関する相談に応ずる事業
○ 児童福祉法に規定する以下の事業
・児童自立生活援助事業
・放課後児童健全育成事業
・子育て短期支援事業
・乳児家庭全戸訪問事業
・養育支援訪問事業
・地域子育て支援拠点事業
・一時預かり事業
・小規模住居型児童養育事業
○児童福祉法に規定する以下の施設を経営する事業
・助産施設
・保育所
・児童厚生施設
・児童家庭支援センター
・児童の福祉の増進ついて相談に応ずる事業
○母子及び寡婦福祉法に規定する以下の事業
・母子家庭等日常生活支援事業
・寡婦日常生活支援事業
○母子及び寡婦福祉法に規定する母子福祉施設を経営する事業
・母子福祉センター
・母子休養ホーム
・父子家庭居宅介護等事業
○老人福祉法に規定する以下の事業
・老人居宅介護等事業
・老人デイサービス事業
・老人短期入所事業
・小規模多機能型居宅介護事業
・認知症対応型老人共同生活援助事業
○老人福祉法に規定する以下の施設を経営する事業
・老人デイサービスセンター
・老人短期入所施設
・老人福祉センター
・老人介護支援センター
○障害者自立支援法に規定する以下の事業
・障害福祉サービス事業
・相談支援事業
・移動支援事業
○障害者自立支援法に規定する以下の施設を経営する事業
・地域活動支援センター
・福祉ホーム
○身体障害者福祉法に規定する以下の事業
・身体障害者生活訓練等事業
・手話通訳事業
・介助犬訓練事業
・聴導犬訓練事業
○身体障害者福祉法に規定する以下の施設を経営する事業
・身体障害者福祉センター(身体障害者福祉センターA型、B型、在宅障害者デイサ-ビス施設、障害者更生センター)
・補装具製作施設
・盲導犬訓練施設
・視聴覚障害者情報提供施設
・身体障害者の更生相談に応ずる事業
・知的障害者の更生相談に応ずる事業
○障害者自立支援法附則第四十八条に規定する以下の精神障害者社会復帰施設を経営する事業
・精神障害者生活訓練施設
・精神障害者授産施設
・精神障害者福祉ホーム
・精神障害者福祉工場
・精神障害者地域生活支援センター
○生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業
・簡易住宅を貸し付ける事業
・宿泊所等を利用させる事業
・生計困難者のために、無料又は低額な料金で診療を行う事業
・生計困難者に対して、無料又は低額な費用で介護保険法に規定する介護老人保健施設を利用させる事業
・隣保事業
・福祉サービス利用援助事業
○社会福祉事業に関する連絡又は助成を行う事業
・連絡を行う事業
 つまり、これらの事業を行いたい場合は、社会福祉法人を設立する必要があると言うことである。社会福祉法人は、社会福祉施設などの事業所を拠点として福祉サービスを展開している。そのため、社会福祉事業を運営継続していくために必要な資産を有していなければならない。基本的には、土地・建物等の不動産、その他、事業運営に必要な動産であるが、不動産については、原則として所有権を有している必要がある。ただし、不動産・動産について国又は地方自治体から貸与又は使用許可を受けている場合には、1,000万円以上に相当する資産(現預金等)を基本財産として所有していることが条件となる。特例もあり、都市部等で土地取得が困難な状況で国又は地方自治体以外から貸与を受けている場合は、事業存続に必要な期間の地上権又は賃借権を設定し、これを登記すれば認められることになる。この特例は、特別養護老人ホームや新設の保育所等で適用される。
 社会福祉法人における事業は、福祉サービスを提供するのが主たる目的であり、企業のような利益の追求は、発生しないが、経営する社会福祉事業に支障がない限り、公益を目的とする事業又はその収益を社会福祉事業若しくは公益事業の経営に充てることを目的とする事業を行うことができるとある。公益事業や収益事業については、継続性のある事業であること等、認められるには幾つかのルールをクリアしなければならない。
 例えば、分かりやすい例として、社会福祉施設の土地の空きスペースを駐車場として賃貸する場合がある。その場合、賃貸料収入が発生するため、収益事業となるが、その収益を社会福祉事業に充てなければならない。ただし、社会福祉法人の場合、法人の所得税である法人税は、非課税となっているが、収益事業の所得については課税対象となる。そのため、会計上も、社会福祉事業会計と区分し、特別会計として経理することになる。
 社会福祉法人がすべて、社会福祉施設を経営しているとは限らない。第二種社会福祉事業である社会福祉事業の連絡を行う事業のみをもって法人の設立を認められる場合も少なからずあるのである。社会福祉協議会や福祉事業団が大きな組織として挙げられるが、「いのちの電話」等の小さな事業もある。これらの社会福祉施設を経営していない社会福祉法人の場合、原則として設立時に1億円以上の資産を基本財産として有していなければならない。ただし委託費等で安定収入が見込まれる場合の基本財産は、所轄庁が認める額の資産とすることが出来るとなっている。
 社会福祉法人が行う社会福祉事業は、国民の福祉の確保であり向上である。本来、国家が担うべき国民の福祉を負託されているのである。そのため、課税に対していくつかの特例措置が施されている。
 社会福祉法人と言えども収益事業における所得や取引に関しては、課税対象となるが、社会福祉法人に係る所得としての法人税、事業に対して課せられる事業税は非課税である。印紙税については、事業委託契約書等については課税されるが、領収書や利用契約書は非課税となる。消費税は、原則非課税であるが、物品購入等の日常的な取引支出においては消費税を支払っている。ただし、1000万円以上の雑収入等がある場合は、申告手続きと納税が必要となる。この場合、法人単位となるため、各事業所が1000万円に満たない状況でも合算して1000万円超過すれば、消費税対象事業所となる。市町村・都道府県民税、不動産取得税は非課税、固定資産税は、原則非課税、ただし、課税基準時点(1月1日)において、施設建設中だったり等、社会福祉事業が実施されていない状況では課税される。特別土地保有税も原則非課税であるが、固定資産税と似た扱いになる。ただし、施設建設が竣工後、社会福祉事業が開始されれば、遡って免除になるため、申請を必ず行うようにしなければならない。
 例えば、児童養護施設であれば、登録免許税法第4条第2項、別表第3の10項の第3欄第1号に該当する不動産となり、これが非課税対象の根拠となる。
 社会福祉法人は税制上の優遇措置があるが、その分、社会福祉法人として認可を受けるためには、幾つかの条件を満たさなければならない。